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ビブリオバトルについて [大学教育について]

ビブリオバトルとは、バトル参加者が他者に読ませたいと思う本を持ち寄り、制限時間(通常5分)のなかでプレゼンテーションを行い、最後に投票にて、その日のチャンプ本(最も読みたくなった本)を全員で選ぶというものだ。

教育現場では小学校段階から導入されている。また図書館や書店、さまざまなコミュニティでも本好きな人々の間で行われている。私も2013年からビブリオバトルを大学教育にて活用している。

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出典 都立図書館 http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/reference/pdf/biblio.pdf

期待される教育効果
教育でビブリオバトルを使うことには、本好きな人々(また人前で話すことが得意な人)だけで行うバトルと本質的な違いがある。教室では「強制的にバトルに参加させられる」のだ。本を読むという行為が好きと嫌いとにかかわらず、人前で話すことが得手不得手にかかわらず、教師によって学生(生徒や児童も)は参加することになる。

しかし、参加は強制であったとしても、本を選ぶ行為、それを他者に読ませたいとプレゼン内容を考える行為は主体的なものとなる。人前で話す、そして最後には一人の勝者が生まれるというプレッシャーは、準備段階に刺激をもたらす。本来人間は話すことで快楽を得る(それゆえ他者の話に誠意を持って聞くというより、会話の最中も自分が何と答えるかに集中してしまう)とはいうが、多数の前で話すことに快楽を得ることにはある程度の経験が必要だ。ビブリオバトルを通じて、主体性、人前で話す訓練が期待できる。

また、ビブリオバトルでは一般的に図書の分野やテーマを設定しないが、教育現場ではバトルへの習熟度によると考えている。はじめて参加する学生が多い場合には、その人がこれまでの人生で出会った本のなかから自由に選んでもらう方が良いだろう。自信をもって話せる本を持ってこさせた上で、上手く話せた経験を積んでもらうことが重要だ。他方で、たとえば国際関係を1,2年勉強したゼミ生であれば、国際関係に関係するものと分野を緩く定めた上で、夏休みの間に図書館や書店で色々な本を手に取るように時間を与えた上でバトルをすることは、専門分野の幅広さや、そのなかでの自らの関心に射程を定めさせる上で教育効果が期待される。

学生の戸惑いや失敗、教師の役割
当初導入したときの経験では、色々と驚くことも多かった。たとえば、大学入学直後の一年生はそもそもマンガ以外にろくに本を読み通したことがない学生も少なくない。(なおマンガを否定しているわけではない。むしろマンガの可能性を感じる多くの作品もある。)結果として、本屋で平積みしてある本から深く考えずに1冊買い求めただけで、実際に読んでみてもそれが本当に面白いとは思えていないことが多い。また、本であれば何でも良いということで、「Yokohama Walker」や「るるぶ山梨」を持ってこられたこともあり、反応に困った。本という概念をどう考えるか、それは確かに人によるだろう。しかし、情報が羅列してあるだけの雑誌は、その情報が必要な人に意味があっても、それ以上ではない。本の選択に当たっては、教師がある程度説明しておく必要があるだろう。

また、ビブリオバトルでは制限時間は厳密に運用することになっている。5分が推奨されているが、初期の段階では3分など短くすることもできる。ただし、その長さにかかわらず、制限時間を途中で終えることは許されず、他方で延長することも一切許されない。

これは話すことの経験が少ない多くの学生にとって、しばしば厳しい条件のようだ。5分話すはずが3分で終わってしまい途方に暮れる学生、余った1分で本の価格や出版社をただ棒読みする学生、いきなりまったく本と関係のないエピソードを話し始める学生など、色々な反応を見せる。留学生ゼミで行ったとき、制限時間は4分としたが、それでも時間を終えることのできない学生がおり、開いたページを棒読みする学生などもいた。しかし、ルールはあくまでも厳格に運用すべきだ。ルールにあるように、事前原稿やメモを読み上げることも許してはならない。時間に足りないのは本人の練習不足、読み込み不足。それを伝えておくことも教師の役割だろう。

楽しい雰囲気が何より重要
教室で行う以上、厳しさをもって運営すべきだが、同時にビブリオバトルを通じて本を読む喜び、それを人と共有する楽しさをしってもらうことを忘れてはいけない。ビブリオバトルが優れていることは、プレゼンのあいだは大きな時計で発表者を焦らせる、プレゼンの後に簡単に質疑を行う、最後に投票を行うなどゲーム的な要素を取り入れていることにある。緊張するけれども楽しい、そうなることが理想だ。

投票を行うと、たしかに一票も集まらない本が多数出てくる。学生だけでやっていると、実はすばらしい本でも専門的すぎて票が集まらない場合も多い。こういった場合には、教師から、投票はあくまで読みたくなった本についてであり、勝てなかったとしても本そのものより発表者の話す技術も大きく関係することを伝え、また低い人気になった本の良さを補足的に説明することも求められる。(なおタイムキーパーや質疑、投票のために司会役が必要だが、教師はあくまで後ろにいる方がよい。)

ビブリオバトルを様々な学生の組み合わせの演習でおこなっていると、色々と面白い本に出会うこともある。また、1995年生まれの学生が『僕らの七日間戦争』を図書館で発見し、あの本の意味するもの(学生運動)を説明したときには正直に驚いた。発表者の宗教観や大学進学の理由などを本の紹介を通じて知るときもあった。

少人数教育の演習では、学期に1回程度経験させると良いと思う。合宿などで集中的に行うことも一案だ。(なお各回のバトルでの報告者は(集中力を維持させるため)最大でも10名以内に留めることがよい。)