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自著を語る [雑感]

以下,東大のアジア研究の情報ネットワークへ寄稿した「自著を語る」の転載です。

ASNET(東京大学日本・アジアに関する教育研究ネットワーク)メールマガジン No.572(2016/1/8)

佐橋亮『共存の模索 アメリカと「二つの中国」の冷戦史』を語る

 本書を通じて,今まさに注目が集まっている米中台関係の基本構造の解明につなげようとした。帯にあるように,「超大国アメリカの葛藤」こそがテーマだ。
 本書は冷戦華やかなりし頃の1948年から,米中接近そして国交正常化に至る78年までの激動の30年を一貫した枠組みで説明しようとした。対置されるのは,キッシンジャーやブレジンスキーによる,大国政治こそ重要で自分たちが対中接近でそれを成し遂げた,台湾問題は重要でなかったとの誇らしげな回想である。
 しかし,アメリカは(米中接近の遙か前の)台湾海峡危機や核開発,ベトナム戦争に際して中国との不要な衝突を避け,中ソ対立に目配せし,政策転換を公に訴えるなどリスクを避ける賢明な道を探ろうとしていた。それがタイトルの「共存の模索」だ。台湾の国府は軍事行動や財政に干渉され,行動を抑制されていた。
 アメリカは他方で,国府との関係が自らの信頼性に係わることを理解していた。それは米中接近後も変わらない。ニクソンは世間に隠して密約を多く与えた。カーター政権の国交正常化は政治スケジュールを重視した拙速な交渉姿勢と,鄧小平の誤解によって成立した。それは台湾関係法によって揺り戻され,中国に大きな不信も残し,現在の台湾問題,米中不信の源流を作り出している。
 史料は全米を行脚し集めた。最も感動したのは,国交正常化交渉に直に携わった二名が密かに50時間にわたって録音したテープの存在に気づき,遺族から特別にアクセスを許されたことだった。筆写で持ち帰ったノートは今でも宝物だ。

勁草書房 2015年12月刊
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b213094.html