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キッシンジャー氏のインタビュー [雑感]

日曜版の日経には、ヘンリー・キッシンジャー氏の1面インタビューが掲載されています。

十年前はじめてお会いし、1週間つきっきりでアテンドしたとき、様々なことを勉強させて頂いたことを思い出します。

キッシンジャー氏は冒頭、アメリカのおかれた立場を考えれば、国際主義からの離脱はあり得ないことを強調しています。

米国に『新・孤立主義』の選択肢はあり得ない。それは外交政策を知らない人たちの間で流行するロマンチックなファンタジーにすぎない(略)(リベラルな国際主義の)伝統を持ち、確立してきた国々は今後もそれを追い求め続けるべきだ。これが彼らにもしっくりと来るからだ。


さすがに面白いなぁと感じさせるのは、トランプ氏らもリベラル国際主義が自分たちの価値観に共鳴するに違いない、という後段の指摘です。

たしかにトランプ氏も、彼に投票したアメリカの有権者も、アメリカの価値観を信奉しているわけですから。

それを力で押しつけるか(ネオコンやリベラル強硬派)といえば、そうではない、とトランプ氏は思うでしょうし、キッシンジャー氏も軍事介入を戦略的必然にしたがって判断すべき、と最近のアメリカ外交をめぐる論争を皮肉っています。介入主義を修正した上でアメリカの価値観と国際秩序を摺り合わせられるのか、すなわちアメリカの力抜きで世界は安定、さらに正義を実現できるのか、それは実はオバマ政権(通称、オバマドクトリン)をめぐっても展開されてきた問題です。

インタビュー全文を読むことを強くオススメして、ここでは興味深い点をあと2点だけ紹介します。

多くの同盟関係はソ連が大きな脅威だった時代に生まれたものだ。今、新しい時代において脅威の内容は違っている。それだけ取っても、すべての同盟は再考されなければならない。新しい現実に立ち向かうため、前向きな意味で再考すべきだ、ということだ


同盟のポートフォリオをどう組み替えるべきか。これは簡単な問題ではないですが、トランプ・ドクトリンを予想し、それに備える時代の到来だと思います。

またアメリカの同盟国、パートナー国がどのように対応していこうとするのか、私たちは横にめくばせをするように研究・調査を進めるべきでしょう。

米中両国には文化的に大きな違いがあるだけに、それをいかにして成し遂げるのかは最も難しい課題といえる。そこには競争の要素もあるが、共存という重要な要素もある。その双方を心に強く留めておかなければならない


ありがとうございます。私の監訳書のタイトルは『支配への競争』、著書は『共存の模索』といいます

キッシンジャー氏には改めて献本差し上げたいと思います[わーい(嬉しい顔)]

さておき、米中接近をニクソン大統領とともに切り開いたキッシンジャー氏は、最近米中関係を異なる二つの文明と捉え、折り合いをつけるのが難しいかも知れないという文化的視点を強調されています。

氏の『国際秩序』、『中国』という二つの近著では米中協調の方法論も書かれていますが、その根底にある問題意識が面白いと再び感じたところです。

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