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経済教室 トランプ外交をよむ [雑感]

日経の経済教室にトランプ外交の解説が掲載されました。

経済教室 トランプ外交をよむ 政権中枢、省庁の調整が鍵」『日本経済新聞』2017年2月27日。

一週間前に入稿している原稿なので、先週木曜日のロイター通信によるトランプ氏へのインタビューやメディア締め出しが報道され、さして新しい内容に感じられないかも知れません涙

トランプ外交を全体としてどう捉えればよいのか、一段だけ抽象化した解説くらいに読んで頂ければと思います。

もっと小ネタや大胆な予測をしてもよかったのですが、日米安保見直しも、とか若手は怖くてかけません(木曜の添谷先生の経済教室)。

米中関係のパイプはクシュナーで崔駐米大使と頻繁に接触とか、トランプは電話協議後にとても満足していたとか、台湾問題でつぎに撃たれるタマはこれだろうとか、

バノンとロシアとか、マティスのイラン嫌いとか、ナバロの機能不全とか、

ティラーソン国務長官も存在感薄いが、これだけは共和党のある意味伝統(国務長官はあまり機能しない)とか、

日米会談をうけて防衛協力の任務・役割・能力の見直しが起きるが、隣接国重視の日本とそれを越えた発想のアメリカで同床異夢になるかもとか、けど北朝鮮だけはそれを日米がそれぞれ自国のために利用して、一気に色々事を進めかねるかもとか、

こういった背景や予想を書いてもよかったのですが、全体的にオーソドックスなまとめ方に留めました。全体として何が起きているかの解説を優先させたかったためです。

すべての箇所に文献注が打てるほど、資料を読んで作っています。

いずれにせよ、トランプ外交を孤立主義とか断罪することはもうやめにした方がよい、というメッセージは込めたつもりです。自国優先主義であっても、世界には関わる。ただ、我々と全く違った世界をみている人間が多い、ということが大切なんだと思います。

オバマ時代から振り返りつつ、米中関係とアジアの今後を展望した対談を行いました。川島先生の胸を借りた一時間でした。通であれば知っている良質な雑誌『公研』から。許可を経て、以下から読めます。

対談「トランプ政権と米中関係(川島真・東京大学教授と)」『公研』2017年2月号、38-54頁。

カナダ講演旅行 [遠征日記]

1週間のカナダ滞在から戻りました。

カナダではGlobal Affairs Canada(外務省の通称!)、国防省の旧知の人も多数参加してくれて150名越えの大イベント@外務省ビル。カールトン大、カルガリー大国防研、UBCでもとてもよい議論ができました。

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アジア秩序論からふり出して、トランプや北朝鮮(カナダは国交あり)の話でも盛り上がる感じでした。

2月のカナダって何の罰ゲーム!?と思ってました(=当初予定は10月だったのです)が、オタワはちょっと寒かったものの、カルガリーは東京並み。春を連れてきたような感じで暖かく迎えてもらえました。

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1年前に在カナダの担当者に直接メールをもらい、練りに練られたプラン、心のこもったもてなしで、本当に日カナダの関係者一同に大感謝です。在京カナダ大の皆さんにも過去4,5年良く教えてもらっていて、今後も日カナダ協力について考えを深めて行ければと思います。

メキシコ、キューバと続いてきたアメリカ周辺をめぐる旅も1年半かけて、とりあえず完結です。

来年度はキューバとのイベント、スタンフォードでの集中講義などを予定しています。東海岸を嫌っているわけではありません、念のため(時々行っています)。

来週は札幌に行きます。飛行機が飛べば。

一つの中国政策について(続き) [記事紹介]

10年ほど前に国防総省(ペンタゴン)の長官府で中国担当をしていたBosco氏のコラムが以下。

Trump and 'One China': Two Phone Calls, Many Interpretations
http://thediplomat.com/2017/02/trump-and-one-china-two-phone-calls-many-interpretations/

アメリカの「一つの中国」政策に関する理解は、前回のブログで紹介したものと全く同じです。

両岸の平和的解決(78.12の米政府声明、台湾関係法の流れ)についてもきちんと触れてありますし、米中両政府が不同意の同意をしていること、中国政府が勝手に一つの中国政策を一つの中国原則を言っていると考えていることなど、きちんと指摘しています。

また前回ブログに書いた際に、78コミュニケの中国「人」の立場を認識した、と言う箇所に「本当かよ」と指摘を頂きましたが、この方も適切に読んでいます。(acknowledges that China (and some Taiwanese) says that....と言い換えていますが、同じことです。この場合のsome Taiwaneseは国民党のこと。)

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この方は少なからずプロフェッショナルです。

しかし、ワシントンDCというのは面白いところで、アジア政策をやっています、中国をみています、という方でも一つの中国政策を全く理解できていない方も多いです。

そのような方々はアラサーからアラフォーのあたりで、政治任用で一気に政権に入ることを狙ったり、シンクタンクで目立つことを意図している様な方なのですが、官僚たちがきちんと積み上げてきた共通理解、組織としての記憶をまったく引き継いでいないことが多いのですよね。

それでもいきなり政治任用というアメリカ独特の制度で偉くなったり、メディアであたかも分かっているかのような顔をして説明したりします。ワシントンはとにかく自分を大きく見せなければいけない街なので、そんなことばかりです。そして中国政府の宣伝工作というか、説明を飲み込んでしまっていることも多々あるのですよね。

日本は基本的にはしっかりと、たとえば日中関係の基本文書について理解をしていると思いますし、官僚のあいだで引き継ぎがされ、維持されていることが良いと思います。

ただ、もし、もしかしてアメリカの一つの中国政策についての理解が何か異なっていれば、憚ることなく正しい理解にして頂ければと思います。日本メディアにも同じことを申し上げたいと思います。

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前回のブログが予想外に多くの方の目に触れ、大変嬉しいのですが、私のブログは基本的に雑文ばかりなのでご期待に添えるかは分かりません。論文のときのような緊張感をもたない書き物として書いていますので。。

いずれにせよ、今はカナダに来ています。昨日は外務貿易省(Global Affairs Canada)で150名満席のシンポジウム、今日はカールトン大学で教員・学生とのセミナーでした。これからカルガリーです。

CNNではフリン(国家安全保障担当大統領補佐官)辞任のことばかりで盛り上がっています。

ただ、マティス国防長官のNATO訪問、ティラーソン国務長官の欧州訪問、(さらに翌週のペンス副大統領の欧州訪問)をしっかり見る必要がありますし、同盟国を重視する政策へはきちんと回帰しているようです。

またフリン後任も、どうやらCENTCOM(中央軍司令)時代の副官になるようで、国土防衛省長官とともにマティス長官の部下が閣内に2名という体制になるかもしれません。政策形成こそ、トランプ政権の肝ですが、マティス長官の影響力強化は、(トランプ氏や側近たちが雇用創出と移民対策に関心をよせているなかで)安全保障政策の「聖域化」を実現することになるかもしれないですね。

楽観に終わるかも知れませんが。

追記 2.17 やはり楽観なんてするものではありません・・・。国家安全保障担当大統領補佐官に声がかかった元海軍中将は、人事を一新したいという希望が全く受け入れられず、職を辞退しました。その背景には、ホワイトハウス上級顧問・首席戦略官のバノンの影響力があります。彼は『フォーサイト』の会田連載にあるように、かなりのイデオロギーの持ち主です。このままトランプは側近政治を続けるのでしょうか。マティスや国防・国務省はじめ、官僚・軍人といったプロフェッショナルはどう巻き返すのでしょうか。

http://foreignpolicy.com/2017/02/16/bannon-wins-as-navy-officer-rejects-national-security-advisor-job/?utm_content=buffere8309&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

米中電話会談と「一つの中国」 [雑感]

トランプ・習電話会談(17.2.9)で「一つの中国」政策を「尊重する(honor)」という表現が報道で取り上げられています。

正確には「アメリカ政府の従前の(our)」一つの中国政策を尊重すると言っています。その意味が分かる人は少ないのかな、と思いました。日本の新聞報道は少し不正確、アメリカでもイマイチな書きぶりです。(アメリカ政府は従来の政策を継続する方向、という書き方はOK)

学者の仕事かな、と思うので、(誰も見ないような気がしますが)少し解説します。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents-call-president-xi-jinping-china

今回のホワイトハウスのリリースにある、
President Trump agreed, at the request of President Xi, to honor our "one China" policy. (トランプ大統領は習近平国家主席の求めに応じ、アメリカ政府の従前の『一つの中国』政策を尊重することに合意した)


という文面は、中国政府が考えているような一つの中国原則をアメリカが受け入れたことは全く意味しておらず、アメリカ政府の従前の立場(一つの中国政策)を、さらに尊重(honor)しただけです。

Honorの定義はto regard or treat (someone) with admiration and respect (Webster)であって、Chinese position(両岸の中国人の立場)をacknowledge(認識)したもの(78コミュニケ=従前の立場)を、「案外よいものだよね(尊重します)」としているだけです。

これを中国外交の勝利とか言っている中国人研究者は、正直終わっているような気がします。(NYTなどに引用)習近平さんを讃えれば御用学者としての責務を果たせるのでしょうが。

追記2.13 ourが米中両政府ではないか、との指摘がありましたが、一つの中国政策はアメリカのものであり、中国は原則と表記するのであり得ません。

追記2.13
honor/ acknowledgeの定義についてコメントを頂きました。honorはもっと強い、acknowledgeも認識といっても権威を認めているというものです。事実、acknowledgeはhonorよりは強いし、take noteよりは遥かに強い。しかし、承認でも受け入れでも決してありません。honorの定義は上に上げたもの以上ではないです。

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それでは、アメリカ政府の従前の立場(78コミュニケ)とは何か。

日本では78コミュニケもおそらく不正確な理解が一般に流通している(その原因は外務省仮訳にも起因していると思っています)ため、最近の展開が十分に理解できていないような気がします。

すでに著書『共存の模索』でも指摘してあるのですが、(中国政府を承認し、台湾の中華民国との関係を断交、台湾との経済社会関係を非政府で維持することに加え)、アメリカは[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国『人』(Chinese)の立場を認識した(acknowledge)、というのが正確な「一つの中国」政策の立場です。

中国人、という表現は72年のコミュニケにあった両岸全ての中国人(=大陸と台湾をともに含む)からつながっている表現です。

中国政府は(アメリカ政府が)中国的立場を承認と訳したので、もう無茶苦茶(二重に間違っている)なのですが、日本政府仮訳も「中国の」立場、と訳してしまったのです。正確には中国人の立場という72コミュニケの理解をアメリカ政府は変えていないにもかかわらず。

最近、WSJでボルトン元国務次官(ついに国務副長官の夢は断たれたようですが)が「中国人の立場を認識したと言っても台湾は今や台湾人の国だ」と大胆な発言をしたところですが、ここでも「中国人」と理解されています。それでいいのです。(このボルトンさんのコラムは在沖米軍の台湾移転のところばかり注目されてしまい、とても日本的なのですが、本旨の理解が不十分です。)

なお、本当かよ、と思う方は、アメリカ政府で長く中国、台湾政策を扱い、責任者(AIT)を務め、ブルッキングス研究所北東アジア研究所長をずっとされているリチャード・ブッシュさんの本を読んでください。

繰り返しですが、中国政府の一つの中国原則をアメリカ政府が受け入れた/承認したなんていうことは過去も今回もないし、これからもないでしょう。

追記2.13
なお、アメリカ政府内でコミュニケ原案が作成されたのは77.7であり、その際には[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国人の立場を受け入れる(accept)という表記がありました。これを認識(acknowledge)に修正したのは(さらに台湾は中国の一部を削除:のちに官僚が再挿入)ブレジンスキー大統領補佐官です。ブレジンスキーは、今や中国の友人の顔をしてますが、かなりのエピソードを著作のなかで紹介しておきました。

追記2.13
今回の流れを作ったのは、ティラーソン国務長官、および(楊国務委員と電話で話した)フリン大統領補佐官と報道されています。ティラーソン長官の上院議員への回答書も台湾問題で従来の立場を(ある意味で必要以上に)強調しているので、適時ブログでもフォローしていきたいと思います。

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電話会談翌日のピューリサーチの調査報告は面白いです。

アメリカにおける中国認識が著しく悪化しているという内容。過去10年で、ざっくり20%は悪化しています。党派制よりも、世代間の差が大きく、高齢になるほど中国認識が厳しいようです。

http://www.pewresearch.org/fact-tank/2017/02/10/americans-have-grown-more-negative-toward-china-over-past-decade/

共和党支持者のあいだではどうも、ロシアよりも中国を見つめる目が厳しいという結果もほかのピュー調査ではでています。

米中関係にあまり楽観の材料はない、と思います。別に一般的な中国の方々が楽観される分にはいいのですが、軍や最高指導部が変な楽観をして、西太平洋で暴れないで欲しいと、切に願います。トランプ=張り子の虎説が様々な中国人によって流布されていることは、何とも危険です。

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最近、トランプ政権と米中関係について、少しだけ解説をする機会が増えました。

東洋経済、2月4日号 74-5頁 (3回引用)
公研 2月号 38-54頁 対話:トランプ政権と米中関係(川島真・東大教授の胸を借りた対談)

今は少し大きめな解説を書いています。当たるも八卦当たらぬも八卦。。。