So-net無料ブログ作成

突風のような米中の軋み [雑感]

前回の投稿と矛盾するようですが、今週は中国にとって最悪、としかいいようのない週です。

北朝鮮制裁で手ぬるいと批判され、人権報告書では北朝鮮と同じレベルに格付けされ、そして台湾への14億ドルの武器売却を国務省は議会に提出しました。怒濤の三連発です。

0630.png

ただ、これをどうみるべきか。

今週に研究会に来てもらった、あるアメリカ専門家は「変節点を超えた」と表現しました。

そのときには、私は7月こそ本当の正念場ではないか、とは答えたのですが(ここで大きく譲歩を引き出すための交渉材料としても圧力を強めているとの解釈)、その専門家の表現はもう後戻りできない(すなわち中国を見限った)ということを意味しています。

どちらなのか。

まだ分かりません。アメリカのビジネス、銀行や一部産業はまだ中国に利益がありますし、中国のアメリカへのFDIは400以上の選挙区に入っていると言います。

ただ、米中のバランスがどうも中国優位のペースになっていることへの危惧が、このような動きを作っているとは言えそうです。

誰が絵を描けているのか、それは全く分かりませんが。

他方では、第4のコミュニケとか、一つの中国政策の見直しとか、逆方向のことも噂されるなか、結局はいつも通りの潮目変化もあるかもしれません。。。分析のしようがない話です。

それにしても、今回のトランプの、女性キャスター批判はひどいものです。
いかに主流派メディアが嫌いでも、顔の整形措置をしたことをこういう風に批判するなど、人格を疑います(いまさら疑うのも何ですが、そういう日本語しかないのでしょうがない)。

06301.png

結構好きなイラストに、こういうものがあります。トランプの被害者の皆さまというものですが、女性、共和党、アメリカ(アンクルサム)、そして地球(気候変動に関するパリ条約の破棄)が並んでいるとパリ条約に関する決定を非難したものですが、、、女性こそ最初に並んだ「被害者」として相応しいと、改めて思いました。
IMG_0311.JPG



「トゥキディデスの罠」か「チェンバレンの罠」か? [雑感]

6月は、英語論文を一本仕上げつつ、非常に緊張感のある場で報告の機会を頂きました。

米中関係とアメリカの戦略、と題した報告では、冒頭に、5月末に出版された(英語)グラム・アリソン氏の新著に触れ、アメリカ外交における対中宥和の考えについて検討しています。トゥキディデスの罠を述べたアリソンは、中国の朝鮮半島での協力等と引き替えに、在韓米軍撤退や日韓へのMD供与見直し、南シナ海での立場見直しなど、さまざまに「ご提案」されています。

レジメは以下のように始めました。

1. 「トゥキディデスの罠」か「チェンバレンの罠」か? A) 激しい論争:G.アリソンへのA.ウォルドロンの批判 B) 宥和的措置への誘惑: J.スタインバーグ&オハンロン『戦略的再保障』、C.カプチャン『どのように敵国は友好国になるのか』 C) 歴史の教訓?:D.アチソンの失敗 D) ティラーソン発言:「一つの中国政策と今後の50年」 E) リアリストなど代表的知識人の「合理的な解」としての宥和と寛容さ?


アメリカには過去70年以上、中国を取り込めるのではないか、中国を変えられるのではないか、それが安上がりな政策ではないか、そうしなければ危険ではないか、といった議論が時に現れてきました。

それを提唱するのは、国務長官であったり、代表的な国際政治学者であったり。いずれにせよ、突拍子もない考えとして現れるのではなく、とびきりの知的エリートたちです。

中国に関心を持ったのは、初期には宣教師のこどもたちでした。最近に宥和的な発言をするものには中国専門家やビジネス利益がつながっている者も多いです。しかし、それよりも、最高学府と政権の頂点にいる、中国にさして知識もないものたちが宥和主義に陥る、その方がインパクトも大きいものです。

現象としては大変興味深いところはあります。インド政策にも、「誰しもインドに恋をする、しかし決して得られないものだ」という教訓があると言われますが、中国政策には趣は違いますが、何かがあるようです。前者はある種のオリエンタリズムの香りがしますが、中国に関してはプラグマティズムの香りもあるような気がしてはいます。

報告ではその後、冷戦期からオバマにいたるまでの論争、政策を簡単に振り返り、最後に以下のレジメにあるようにまとめました。(一部省略しています)

5.トランプに戦略はあるか? 中国的思考・レトリックへの巻き込まれ/ 相互に(相手の行動に)シェープされるという認識を持つことは日本のリスク / 米中和解の破綻はあるか、または「アメリカが中国を選ぶ日」が来るのか / 底流にある対中宥和主義 リアリズムによる正当化


米中関係は、今少し温度が冷めてきてはいますが、それでもかなり温かいのは事実。なにより、底流に流れる宥和志向は、政権(ティラーソンが一つの中国政策を今後50年維持するか見直しをしているとの発言)だけでなく、アメリカの知的コミュニティにも増えかねないことに更なる注意が必要だと思います。

それは、日本を取り巻くアジア秩序の根本的な変容を招く、アジアにとっての「チェンバレンの罠」*かもしれません。

追記:米中閣僚対話後、どうも米中にはすきま風という雰囲気が流れているようです。ただ、これが交渉レバレッジをあげるためのアメリカの策略なのか、仲違いの始まりなのかは不明です。他方で、中国からすれば、長期的にトランプ政権と上手くやれる可能性が高いとの確信は持てないため、早めに成果を固めるというアプローチはありそうです。次のハードルは人権問題、G20、そして米中首脳会談からの100日の期限です。

※ミュンヘン会談におけるチェンバレンの評価については当時の文脈でも理解すべきであり、チャーチル的史観を私が持っているわけではありません。一般的な比喩として、ウォルドロン氏が採用したものを援用しています。

在外研究(おかわり) [スタンフォード日記]

5月からまったくブログを更新していませんでした。

手帳を見返すと、5月は連休最後の台湾での研究報告、RIPS主催シンポジウムでの報告、ハリス提督との懇談など、様々書かれています。研究会も毎日のように都内で出席していて、そういえば、横浜、都内、自宅の往復で疲弊していたのを思い出します。

しかし、5月19日からは2週間、古巣スタンフォード大学へ。3回の講義と、1回の公開講演会が仕事でした。

18582214_10158732796560582_5595711009087656836_n.jpg

18582338_10158732795515582_3091771954534752520_n.jpg

昔オフィスをもらっていた一角に部屋をもらい、GSBのダイニングやクーパカフェでお茶を飲み、K&Lでワインを買いました。愛車はヒュンダイのハッチバックでしたが、結構快適でした。当時乗っていたカムリに比べるとエンジンが小さいのでハイウェイで音がうるさいですが。

同僚や、当時からいつも話していた博士課程の友人たちともゆっくり話せて、研究の刺激だけでなく、精神的にも西海岸戻ってきた感が十分に得られて良かったです。

---

スタンフォードでの講演内容(正確には前半はトランプ外交を同盟国が一般的にどう読み解いているか話したので、その後半)をオーストラリア国立大学のEast Asia Forumに十三回目の寄稿という形で掲載して頂きました。

昨日の安倍首相の一帯一路への「条件付き」協力表明に締めくくられた、この2ヶ月の日中関係の変化も、トランプ氏との個人的関係構築と並んで日本外交の重要な柱となりつつあるのではないか、それは過去数年、対中バランシング「のみ」に専念してきたとも言える日本外交の変化の兆しかもしれない、という議論を起こすことを重視したエッセイです。

予想通りというか、アメリカ人(東海岸)のウケは非常に悪かったです。けど、日本外交としては、今日中を進めるのはリスク低下、コスト安めのクリーンヒットなのです。

http://www.eastasiaforum.org/2017/06/06/japans-strategic-hedging-under-trump/