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なぜトランプ政権に楽観するのか [雑感]

ダボス会議直前のインタビューでのトランプのTPPへの言及について、私は以下のように書いた。

TPP復帰検討表明というヘッドラインはミスリーディング。substantially better dealになればといっているし、NAFTAへの離脱辞さない姿勢も触れているし、バイ交渉が好きだとも述べたのが今回のインタビュー。これはアジア政策の転換でも国際主義への復帰でも何でもない。


その後、ダボス会議での演説もされたが、評価を変えるつもりはない。

しかし、この時期日本の大手メディアの報道は楽観一色だった。曰く、CPTPP(TPP11)で追い詰められたトランプがついに回帰した、なかには、アジア政策も転換点を迎えるというものもいた。

その後、今は(TPP再交渉を要求しており、米国第一の姿勢が変わらないため)トーンダウンした評価になり、河野外相も早々と、そして適切に、TPPにそのまま戻ることのみが許されることを明確に発言されたと思う。

パリ合意についても、トランプは再交渉さえあれば、とかいっているが、基本的に応じられることはないだろう。

交渉した事実さえあれば、そこまで大幅な見直しでなくとも戻ってくるのはないか、と粘るひともいる。しかし、アメリカの国内アピールのためだけに、あの途方もない合意形成にリソースを再度かける参加国はどこまであるのだろうか。そして、結局は移り気なあのひとのこと、国内政治(議会、圧力団体)もどのように作用するかわからない中で、要求は決して低くないだろう。

問題は、なぜトランプという、少なくとも戦後誰も見たことのない米大統領が登場したにもかかわらず、楽観的な解釈がつねに生まれてくるのか、ということだ。

同じことは、年末の国家安全保障戦略、今月の国家防衛戦略にも言える。

ホワイトハウスが主導したとはいえ、内容は伝統的なアメリカの覇権主義、国際主義にあふれたもので、軍事的関与をベースに、秩序を形成していこうというものだ。中国がロシアの前に懸念としてあげられるなど、日本の安保関係者にとって小気味の良いところがあるのはみとめる。

しかし、この文書をトランプがきちんと理解しているのか?それは記者会見からすぐに崩れていた。そして米中関係は、北朝鮮問題での協力も必要なことや、トップ関係が良いことから、この文書と矛盾しているとアメリカのなかでは冷ややかな目がある。

国防予算の増加もあり、またこの文書に込められたように、アメリカのなかには中国問題を適切に理解している向きもあることはポスト・トランプ政権への安心材料だろう。ただ、それをトランプ政権の文責に当てはめてしまうことには賛同できない。

TPPもそうだ。CPTPP(さらにはエルサレムでの国連総会決議)で日本はアメリカと異なった立場を明確にした。これは中長期的にみて正しい政策になり得る。短期的に、それも取引主義のままトランプ政権がこちらをみつめることがあっても、それにぶれずに、大局をみた対応が求められる。

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台湾旅行法案 [雑感]

台湾メディアと中国官製メディアしか報じないのが米議会の台湾に関する法案審議ですが、最近は台湾旅行法案(HR535, S1051)がどうもお気に入りのようです。

正直、こういうのは無視してもよいのです。なぜなら、議会が法案を通したところでそれは拘束力をもたず、こうして欲しい、という議会の意志を示しているものに過ぎないから。

しかし、たとえば2016年12月の国防授権法に台湾関係の項目が入れ込まれたときに、提案されている項目も現状との重複があり、さらに行政府への拘束力がないにもかかわわず、台湾メディアがひたすらにさわぐわけです。そして中国も反応する。(その時期にはトランプが蔡英文氏からの電話を受けたこともあり、余計に騒ぎになりました。)

なお、このとき、アメリカのメディアはまったく無音です。蔡英文氏からの電話を受け取ったときは結構アメリカでも報道されましたが、この法案(成立したので法律になっていますが)はスルーです。なぜなら意味がないことを知っているから。(一つの中国政策に照らせばこのような内容が実行されれば意味はあるのですが、行政府を拘束するものではないからです。)

ただ、アメリカにも、このようなことをすれば、実質的に米台関係に意味が薄いのに米中関係を刺激してしまう、という形で批判する声はあります。

さて、今回の台湾旅行法案。米政府の高官が自由に台湾を訪れるべきである!台湾の政府関係者もどんどん来い!という内容です。
(現時点で下院通過時の文章はアップされていないので、議会Webには提案時のものだけ載ってます。)
https://www.congress.gov/115/bills/hr535/BILLS-115hr535ih.pdf

たいした内容ではないですが、下院の台湾派がしっかり根を張っていることは示したでしょう(フォーブス議員が抜けた後ってどうなの?とDCの台湾人に昨秋に聞きましたが、彼は自信をもっていたことが今回よく分かりました)。

で、上院が通るか? (なお法案のスポンサーはルビオ)

。。。夢を持つのは誰しも自由だと思います。

あと、重要なことはこの法が本当に必要なのか、ということ。
台湾には米政府は軍人含めてそれなりに行っていますし、台湾からも国防副大臣がかつて年間19回訪米したように、普通に行っております。つまり、現実には「非公式」という建前のもとで、米台関係は基盤を維持しているということです。

さらに繰り返しになりますが、これはあくまで「べき論」を政策として議会が語っているに過ぎないので、外交を行っている行政府がこれで政策を変えるということではないのです。

そして、台湾、中国は実質よりも「シンボル」を重視する傾向が強く、大きく騒ぎ立てている、という構図なのだと思います。


参考として、ホノルルのPacific Forum(今後CSISから離脱する交渉を開始するそうです)から、TAIWAN TRAVEL ACT: BAD IDEA?と題してDennis Hickey教授が解説を書いています。近く、PacNetとして更新されるはずです。

なお、議会調査局資料にも審議対象の法案は整理されていますので、以下の67ページをみればどのような法案が今審議されているかは分かります。
https://fas.org/sgp/crs/row/R44996.pdf

Japan Times [雑感]

1年ぶりにJapan Timesの取材をうけて、記事に掲載されています。トランプ外交を振り返る記事の中で、北朝鮮危機で日本が恐れているのは米朝対話が北の非核化を条件とせずに始まってしまうこと、という内容で引用されています。

https://www.japantimes.co.jp/news/2018/01/19/national/politics-diplomacy/one-year-later-abes-gamble-unpredictable-trump-appears-paying-off/

まあ、30分ほど色々とお話ししたのですがここだけ使われたようです。
メールで事前に約束がある時もありますが(今回はそう)、突然に研究室の電話が鳴って取材のときもあり、メディア対応も色々です。こういう引用ベースで記事が出たときは、反響・問い合わせが多いような気がしています。いくつかアポを求めるメールが来ます(ただ、研究時間との関係でいつもお答えできるわけではありません。)

日経 経済教室 [雑感]

日経、経済教室にトランプ政権1年を受けての分析を寄稿しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO25747920W8A110C1KE8000/

日本にいると楽観論と、ただのトランプ嫌いからくる批判しかみないので、国際秩序にからめた悲観論も必要かと思って意図的にやっているところがあります。

経済教室は3000字と、紙面でこれだけ使えるのは贅沢です。

年始は草津温泉でのゼミ卒論合宿から仕事始めでした。この仕事も終わったので、別の原稿に取りかかりつつ、採点です。

トランプのアジア政策は変わったのか [雑感]

12月22日に作成した中文(中国語)原稿が1月4日の『聯合早報』(シンガポール:中国でも広く読まれる)に掲載されました。以下、その日本語です。

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 政権発足1年を締めくくるように、今月トランプ大統領は国家安全保障戦略を発表した。文書は中国、ロシアが国際秩序に投げかける課題を列挙、平時でも戦時でもない状況で現状を変わってしまうことに警戒心をしめし、関与をつづければ相手が変わるという幻想を捨て去るべきとも論じた。さらに台湾に関しても、アメリカ政府従来の一つの中国政策の下でと断りつつ、あえて協力を記述した。果たしてトランプ政権の外交は今変わりつつあるのだろうか。
 結論から述べれば、変化が起こると楽観しない方がよい。アメリカ外交が自らの覇権を維持するために積極的に世界に関わろうとする、いわば伝統的な路線に回帰すると、誰が自信を持って言えるのだろうか。文書には米軍人やワシントンの安全保障専門家の視点が存分に盛り込まれたが、移り気なトランプ大統領は依然としてホワイトハウスにいるのだ。
 11月のトランプ大統領のアジア歴訪も、アメリカが依然としてあまり信頼できない外交をとっていることを印象づけた。日本やオーストラリアが好む「自由で開かれたインド太平洋」にトランプは言及したが、その戦略は不在で、むしろアメリカ第一へのブレない言及を与えている。秩序という言葉すら使わなかった。そして、東アジア首脳会議への欠席は、地域の多国間主義に消極的というアメリカ外交の負のサイクルを感じさせるものだった。その後の議長声明にもアメリカへの不安は形になっている。
 さらに米中関係の現状も、国家安全保障戦略が容易に実行されないという見通しを裏付ける。文書の勇ましい響きとは異なり、この秋もトランプは習近平を褒め称え、関係管理にいそしんでいる。その背景には、中国政府が巧みに、トランプの好むやり方で接遇し、お土産として対米投資や物品購入を渡したこともあるだろう。たしかにアメリカでは経済ナショナリストが勢いを増しており、来年にかけて米中経済関係の悪化は十分にあり得るが、中国の巧みな外交でトランプが懐柔される構造は変わらないだろう。
 北朝鮮問題でも、中国は制裁をするにせよ、さらに踏み込んだ対応をするにせよ、最も重要なパートナーと引き続きみなされている。北朝鮮の核ミサイル開発、さらには対話を求めた外交攻勢の正念場は来年と思われる以上、米中はどのように北朝鮮問題の解決を導くにしても、不断の対話をしていくだろう。トランプ外交のもつ、取引主義や軍事力への過信に、同盟国は引き続き恐れをもっていくだろう。
 トランプ外交の本質が変わらないことを観察して、同盟国は次々と新たな動きに進んでいる。たとえば日本とイギリスはこの夏から急速に接近し、安全保障での関係を強化させている。緊迫する東アジア情勢へのイギリスの不安の裏返しともいえるが、両国がトランプ時代の秩序維持を意識していることも確かだ。オーストラリアも久しぶりに外交政策白書を発刊し、中国への配慮を十分に書き込みながら、ルールに基づいた国際秩序が維持されるべきと主張した。アメリカの同盟国はアメリカ抜きで何ができるか、アイディアを次々に形にしていくだろう。
 そしてTPP参加国はアメリカを除いてTPPを発効させる手続きに妥結し、日本とEUも経済連携協定をついに成立させた。これらの動きは、やがてアメリカが自国優先主義の政治から脱却できるかもしれないが、それまでのあいだも自由主義の流れを止めてはならないという目的で行われている。
 その一方で、まったく新しい動きもある。日中関係に吹いている暖かな風はその一つだ。今年の春から改善傾向にあったが、両政府は今後2年に大きく関係を前進させるべく動きつつある。それは両国のあいだにある、妥協しがたい問題での妥協を招くとは思えないが、秩序のあり方を巡って、両国の協力を進めるものだろう。中国政府の一帯一路構想を国際社会のルールにかなうものにすることが日本の目的であり、もしそれが満たされるのであれば日本政府の自由で開かれたインド太平洋戦略と一帯一路の接合面は広がっていくだろう。
 結局のところアメリカ抜きで世界は回らないが、トランプ抜きでも世界は回さなければならない。そのような気概を、各国の動きから感じとる。

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トランプの国家安全保障戦略 [雑感]

通称、NSSがでました。大統領が直接演説を伴って発表するのは異例です。(ただ、トーンが文章と違うと大手メディアには突っ込まれていましたが。)

内容をどうみるべきか。キャンペーン・レトリックの「アメリカ第一」が依然として使われており、また国土防衛、経済を触れた上で、世界への関与(「力による平和」を概念採用)という順序であり、自国優先主義が溢れんばかりににじみ出ています。これまでの政権への批判もいつも通りです。

他方で、日本の専門家を含め、ようやくトランプ政権も軍やワシントン主流派の「伝統的アプローチ」を採用してきたと考えたい向きからは、この文書が力による平和のもと、中国とロシアとの「競争」を打ち出していることを強調しています。

28ページには、アメリカが平和か戦争かという二元的なものの見方をしているなかで、中ロなど競争相手がじわじわと、直接の軍事的反発を招かないような形でものごとを変革していることに注意を喚起しています。

これは問題意識として正しい。問題はそれに正しく対応できるか、です。しかし、この戦略文書には、必要な手立てが十分に列挙されているのか。また少なくとも記載されているのをきちんと実行できるのか。そのあたりへの不信を払拭することができるのでしょうか。

さて、ほかにも気になる記述はあります。たとえば、22ページにはビザの発給制限について書いてあります。STEMなど今後のアメリカの成長にとって重要な研究分野における外国人の諜報活動について、警戒心をにじませています。このあたりは最近翻訳された、「盗まれる大学」にも通じるところです。

45ページ以降は地域戦略があります。中国の活動がグローバルに展開されていることを指摘しており、それは良いと思います。またインド太平洋が第一に取り上げられています。中国が経済力を巧みに影響力に転換させていることが指摘されています。

日本豪州NZインドの前に韓国が挙げられているあたり、外交的にはどうなんだと思いますが、きっと私の目が曇っているのだと思います。なお、貿易に関しては、かわらず2カ国間交渉が書いてあります(TPPの戦略性を評価できないあたりに、NSCの限界を感じます。)

なお47ページの台湾に関する記述は微妙に長く、またour "One China policy"とourをつけた上でTRAとその内容には言及しているので及第点ではあります。

しかし、問題はさきにも触れたとおり、実効力です。米中関係は、たしかに中国側ほど、アメリカ側は現状に満足していません。それは11月でも変わりませんでした。

とはいっても、ランディー・シュライバーが国防次官補になれば台湾政策が急に変わるとか、中国に世界戦略でも、少数民族政策でもけんかを売るとか、そう簡単に動くとも思えません。
経済的な米中交渉は、徐々に別トラックで厳しくなることは十分に予想されますが、外交安保面で、どこまで中国を正面にすえた戦略を打ち出し、そのために関係をある程度犠牲にできるのか。そもそも北朝鮮に資源を多大に投下している中で、ここに書かれたような戦略を東アジアで実行できるのか。

これ以外に戦略が非公開で準備されているという説もありますし、外交史を勉強しているのできっと中国政策レビューは公開されない形で進んでいるのだろうなぁとは思っています。しかし、絵に描いた餅をだしたところで、トランプ外交への評価は容易に変わらないところかと思います。

ツイッター、はじめてました [雑感]

情報収集用がメインですが、ツイッターアカウントを作りました。半年くらい情報をクリッピングしていますので、何かのご参考に。

https://twitter.com/ryo384_ir

フォロバはあまりしていません、、、。

トランプ、アジア歴訪後の動き、北朝鮮をめぐる米中など [雑感]

トランプ・アジア歴訪や地域で行われた首脳外交を受けて、いくつか興味深い動きがあります。

ASEAN議長声明、東アジア首脳会議議長声明は南シナ海、北朝鮮問題でそれぞれ例年と比べてトーンが弱まっています。あきらかに、アメリカのアジア関与の弱まりを受けた国際政治の現象とみるべきでしょう。

日中、中韓関係にはそれぞれ改善傾向が見られます。日中は二つの首脳会談、経団連会長訪問がありました。日中関係への中国側の熱い期待をどう形にするか、両政府の知恵が必要だと思います。中国側の関心事項である歴史や「領土」、台湾などで安易に応ずるのではなく、我々の関心である海洋、サイバー、秩序構築などで取りに行く姿勢を求めたいものです。

中国はTHAAD問題で硬直化していた韓国との関係をそのままにしておけば、今後の朝鮮半島への対処で不利になります。それゆえ戦略的理由から韓国との関係を修復する必要がありました。3つのノーは満額回答に近いのではないでしょうか。韓国側の理由にはオリンピックの無事開催というのもあるでしょうが、経済への悪影響も明らかで、ほっと胸をなで下ろしているでしょう。

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米中関係の「想定外の粘り強さ」は、まだ続いています。中国の北朝鮮への特使派遣が順調に進まなかったことを受けて、北朝鮮のテロ支援国家への再指定、そして中国企業・個人を含む制裁強化がありました。しかしこれを米中関係の緊張とか解釈してはいけない。そうではなく、米中は首脳会談であきらかに北朝鮮問題で握っており、特使派遣がそこまで順調にいかないのも織り込み済み、そのうえで制裁強化で思惑が一致しているということだと思います。

問題は制裁強化の先になにがあるのか。もちろんそこから対話にもっていくのがベストな訳です。しかし北朝鮮は当面ICBMと核実用化を放棄することはない。国内政治的にも。そのうえで対話とすれば、それは来年しかないのですが、そうするとそこまでに制裁で北朝鮮の足腰を徹底的に弱めておくことに意味はあるその意味で、米中が握っていることは、日本の利益でもあります。

しかし他方で、アメリカの元政府関係者(中国専門)が書いていますが、中国が米韓のレジーム・チェンジ案や経済封鎖案にどこまで合意するのかアメリカは見極めようとしている、そのためであれば大きな取引もしかねないということにも警戒が必要です。キッシンジャー的な考えです。これは戦争の可能性を高めるだけでなく、ほかのアジェンダでアメリカが中国の言い分を受け入れてしまうリスクがあるため、危険です。

同じように警戒すべきは、北との交渉では非核化ゴールの先送り(実質的な一時的核保有の容認)をすべきという、とくに民主党系の政府経験者からでてくる考えでもありますが、、、。後者はペリー元国防長官の発言などで(ほかにもG.セイモアなど)注目されてきましたが、前者にも一層の注意が必要です。

出口が不明確なまま進んでいる、トランプによる劇場型強制外交はどこに向かうのか。

不安ばかりです。

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なお、Pewの調査によれば、アメリカ市民の脅威認識において北朝鮮はサイバー攻撃と並び7割以上の市民が脅威と答え、党派性もありません。ISISやロシア、中国を抜いていることに驚きます。

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トランプのアジア歴訪 [雑感]

前回の投稿から数週間たってしまいました。このあいだ、釜山での日中韓、ワシントン、東京での日韓会議に出席しつつ、また東京を訪れた米連邦議員や海外の方々との意見交換などをしていました。

トランプのアジア歴訪について。
これまで通り、日米関係はトランプ=安倍両首脳関係の絆に頼っていることが確認されると同時に、習近平氏を讃える姿勢も春から変わっていません。北朝鮮への挑発がかわっておらず、同時に対話への言及があるのも最近のトレンドではないでしょうか。

他方で、日米では2カ国間FTAに言及があったこと、インド太平洋政策に関する演説が内容が薄かったこと(伝統的なアメリカの東アジア政策路線への回帰とはみなせないもの)は日本の観点からみれば痛手だと思います。また東アジア首脳会議への参加があったとしても、結局アメリカがバイ重視、経済を念頭に置いた取引主義であることもかわりませんでした。

その意味で、今回のアジア歴訪の評価は微妙なものだと思います(終わっていないですが)。日米関係も大きな成果があったとはいえません。北朝鮮問題でのトランプの安易なブレ(軍事オプションも交渉論も)は結局外部からは影響を与えられていませんし、貿易でも2カ国主義はかわらず、そしてインド太平洋戦略は期待外れだったのですから。

他方で、注目すべき動きは、韓国が日米韓により一層の慎重姿勢を示していること(三つのノーで日米韓の同盟化を否定したことに加え、3空母にあわせた日米韓での軍事演習を拒否したとの報道)でしょう。

昨日の日韓会議でも、米中競争の焦点(のひとつ)に朝鮮半島問題がなりつつあり、THAAD問題以降、韓国では米中競争に不用意に巻き込まれることを避けるべきとの論調が強いことがよくわかりました。

日中首脳会談がうまくいったことも重要です。しかし同じ会議で私が論じたのですが、たとえ今年来年の日中40周年、45周年の機運が高まったとしても、日中で「戦略的不信」を克服することはできないのではないか、中国側は歴史と領土に加え台湾を警戒しているし、日本側も尖閣での中国の動きに楽観していない。他方で、別の方が論じていましたが、中国側は日本をそもそも正しく認識していないこともあるので、その意味で2カ国関係の改善は必要だし、両国の指導者、政界の交流の薄いラインを太くするための動きも対処療法として必要だと思います。

この数週間に実に多くの会議と食事、面会で意見を交わしましたがそのすべてをここで書くことはできません。しかし、アメリカの連邦議員2名とのこぢんまりとした夕食ではその見識の広さに驚かされましたし、彼らがメキシコ系、インド系であったことに多様性、可能性を感じました。

また、ジョージワシントン大学のサッター教授(米中関係の権威)との面会では、トランプ外交でアメリカは世界での地位を早急に失っているとの悲観論に安易に走らず、むしろアメリカとの新しいゲームを各国はしていることを見落としてはならない、と痛感しました。

そして、東西センターのサトゥDC事務所長からは、結局トランプ外交での最大の課題は経済貿易、地域秩序の問題で、日米関係の表面的な良さに楽観することをいさめられました。

バランスの良い見方ができるように研鑽を続けなければならないと強く思っています。

お勧め文献と、備忘録 [雑感]

米中関係について、拙い論文を10月号の中央公論に載せはしましたが、以下の2つの論文とあわせて読んで頂くと多面的にみられると思います。

中国側の米中関係をみつめる、政治・安保の視点について、
増田雅之「制度と取引が織りなす米中関係」『東亜』2017年10月号。


米中経済関係について
関志雄「トランプ政権下の米中通商摩擦の行方 人民元問題を中心に」『国際問題』(2017年9月号)


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北朝鮮問題へのアメリカの対応について、電話でのインタビューで、以下の2つが出ています。ともに、アメリカ政府内外に存在する対話姿勢や、核保有国(事実上の)容認論についてです。S.ライス元大統領補佐官(オバマ政権)の言っていることの解釈は難しいところもあるのですが、いずれにせよ、アメリカでは党派を問わず、対話論があります。

「対北朝鮮 どう出るトランプ政権」NHK News Web
https://www3.nhk.or.jp/news/special/45th_president/articles/2017-1010.html

「こちら特報部(北朝鮮)」東京新聞、2017年10月12日。

いずれにせよ、トランプ本人はNFL問題で、再び叩かれ続けています。エミネムの(映画8Mileを思い起こさせる)フリースタイルでの口撃は、彼のファンとトランプ支持者が重なっていると思われることから話題になっています。

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