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トランプのアジア歴訪 [雑感]

前回の投稿から数週間たってしまいました。このあいだ、釜山での日中韓、ワシントン、東京での日韓会議に出席しつつ、また東京を訪れた米連邦議員や海外の方々との意見交換などをしていました。

トランプのアジア歴訪について。
これまで通り、日米関係はトランプ=安倍両首脳関係の絆に頼っていることが確認されると同時に、習近平氏を讃える姿勢も春から変わっていません。北朝鮮への挑発がかわっておらず、同時に対話への言及があるのも最近のトレンドではないでしょうか。

他方で、日米では2カ国間FTAに言及があったこと、インド太平洋政策に関する演説が内容が薄かったこと(伝統的なアメリカの東アジア政策路線への回帰とはみなせないもの)は日本の観点からみれば痛手だと思います。また東アジア首脳会議への参加があったとしても、結局アメリカがバイ重視、経済を念頭に置いた取引主義であることもかわりませんでした。

その意味で、今回のアジア歴訪の評価は微妙なものだと思います(終わっていないですが)。日米関係も大きな成果があったとはいえません。北朝鮮問題でのトランプの安易なブレ(軍事オプションも交渉論も)は結局外部からは影響を与えられていませんし、貿易でも2カ国主義はかわらず、そしてインド太平洋戦略は期待外れだったのですから。

他方で、注目すべき動きは、韓国が日米韓により一層の慎重姿勢を示していること(三つのノーで日米韓の同盟化を否定したことに加え、3空母にあわせた日米韓での軍事演習を拒否したとの報道)でしょう。

昨日の日韓会議でも、米中競争の焦点(のひとつ)に朝鮮半島問題がなりつつあり、THAAD問題以降、韓国では米中競争に不用意に巻き込まれることを避けるべきとの論調が強いことがよくわかりました。

日中首脳会談がうまくいったことも重要です。しかし同じ会議で私が論じたのですが、たとえ今年来年の日中40周年、45周年の機運が高まったとしても、日中で「戦略的不信」を克服することはできないのではないか、中国側は歴史と領土に加え台湾を警戒しているし、日本側も尖閣での中国の動きに楽観していない。他方で、別の方が論じていましたが、中国側は日本をそもそも正しく認識していないこともあるので、その意味で2カ国関係の改善は必要だし、両国の指導者、政界の交流の薄いラインを太くするための動きも対処療法として必要だと思います。

この数週間に実に多くの会議と食事、面会で意見を交わしましたがそのすべてをここで書くことはできません。しかし、アメリカの連邦議員2名とのこぢんまりとした夕食ではその見識の広さに驚かされましたし、彼らがメキシコ系、インド系であったことに多様性、可能性を感じました。

また、ジョージワシントン大学のサッター教授(米中関係の権威)との面会では、トランプ外交でアメリカは世界での地位を早急に失っているとの悲観論に安易に走らず、むしろアメリカとの新しいゲームを各国はしていることを見落としてはならない、と痛感しました。

そして、東西センターのサトゥDC事務所長からは、結局トランプ外交での最大の課題は経済貿易、地域秩序の問題で、日米関係の表面的な良さに楽観することをいさめられました。

バランスの良い見方ができるように研鑽を続けなければならないと強く思っています。

お勧め文献と、備忘録 [雑感]

米中関係について、拙い論文を10月号の中央公論に載せはしましたが、以下の2つの論文とあわせて読んで頂くと多面的にみられると思います。

中国側の米中関係をみつめる、政治・安保の視点について、
増田雅之「制度と取引が織りなす米中関係」『東亜』2017年10月号。


米中経済関係について
関志雄「トランプ政権下の米中通商摩擦の行方 人民元問題を中心に」『国際問題』(2017年9月号)


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北朝鮮問題へのアメリカの対応について、電話でのインタビューで、以下の2つが出ています。ともに、アメリカ政府内外に存在する対話姿勢や、核保有国(事実上の)容認論についてです。S.ライス元大統領補佐官(オバマ政権)の言っていることの解釈は難しいところもあるのですが、いずれにせよ、アメリカでは党派を問わず、対話論があります。

「対北朝鮮 どう出るトランプ政権」NHK News Web
https://www3.nhk.or.jp/news/special/45th_president/articles/2017-1010.html

「こちら特報部(北朝鮮)」東京新聞、2017年10月12日。

いずれにせよ、トランプ本人はNFL問題で、再び叩かれ続けています。エミネムの(映画8Mileを思い起こさせる)フリースタイルでの口撃は、彼のファンとトランプ支持者が重なっていると思われることから話題になっています。

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中央公論への寄稿 [雑感]

発売されたばかりの中央公論に、トランプのビジョンなき対中外交、と題して書きました。

オバマ時代との対比をしつつ、トランプと中国を七千字近く誌面を頂いて解説しています。

やはり読み直すと我ながら学者の文章で分かりづらいところがありますが、ポイントは

オバマは中途半端ではあったものの中国に適切に対応しようと秩序ベースとアプローチをとり、同盟国はじめ地域諸国の考えを酌もうとした。他方でトランプは、対中政策を北朝鮮中心にしたかと思えば、自国経済重視のアプローチや、そのために他の大切なことを犠牲にしたグランドバーゲンもしかねない

ということです。詳細は本誌で確認ください。

2週間近く前に書いているので、少しトランプ政権の政策形成分析に古いところもありますが、それは以下のNYTで補足頂ければ。
https://mobile.nytimes.com/…/wo…/asia/china-us-xi-trump.html

130年の伝統ある雑誌に、読みづらいかも知れませんが学者らしい文章を載せることが出来て、とても光栄です。

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サントリー財団からの助成 [雑感]

神奈川大学アジア研究センターで始めた共同研究で、今年度のサントリー財団助成を頂けることになりました。プレスリリースにまで取り上げて頂き、心から支援に感謝するとともに、成果をきっちり出さないと、と研究代表者として責任を再認識しました。

(神奈川大学アジア研究センターの公式Web)
http://asia.kanagawa-u.ac.jp/index.html

今学期のゼミ [雑感]

今学期もようやく終わりが見えてきました。

スタンフォードへの2週間の講義出張や、一橋大学での国際安全保障の講義など、追加的な仕事のための移動が多く、研究活動や社会貢献もあわせると、時間のやり繰りが大変でした。

今学期のゼミナール形式の講義では、
2年生の基礎演習で「北朝鮮入門」と「ゼロデイ」を、
3年生のゼミで「トランプ王国」「ポピュリズムとは何か」「国際秩序」をそれぞれ扱いました。

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北朝鮮入門は、北の核ミサイル開発が進展している現在、基礎的な知識を得るために格好の入門書です。前著LIVE講義北朝鮮入門も学生に好評でしたが、今回はさらに磨きがかかっています。ゼロデイも、サイバー空間と国際政治の接点を考えるために必読と思える、好著。受講生はとても楽しく読んだようです。

最後に時間の余裕があったため、エモット「『西洋』の終わり」の冒頭50頁を読んでもらって終わろうと思います。ほかに、基礎演習では、新聞記事を使ったエクササイズを毎週行いました。

西洋の終わりは、冒頭と、終章だけでも読む価値があります。エモット氏の話は三極委員会などでも聞いてきましたが、切れ味の良さは本書で遺憾なく発揮されています。開放性と平等がキーワードです。

3年生の前期は、新書を何冊か読んでもらい、知識の幅を広げてもらうとともに、議論の仕方を試行錯誤して自分たちで身につけてもらうことに主眼があります。

電子黒板も導入された演習室でしたので、どのように展開するか暖かく見守っていたのですが、問いの立て方や読み込みが甘く、もう少し介入した方が良かったかと、少し反省しています。しかし(知識が誤っている、進め方が悪いなどといって)介入しすぎると成長機会をむしろ奪ってしまうところもあり、難しいところです。

3年生の後期は専門文献の読み込みを2冊程度。何にするか、思案のしどころです。

もし、学生でこのブログをたまたま見た方は、ぜひゼミや基礎演習2の門を叩いてください。いつでも歓迎です。

北朝鮮とトランプ [雑感]

北朝鮮のICBM発射という事態を受けて、トランプ政権はどう動くか。

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中国を見限ったとは言えないですが、G20、米中を前にして明らかに圧は強まっているのでしょう。トランプのツイッターは、この点に関しては少しずつトーンが変わってきていて、たまには役に立つ実例になっています。米国連大使も、可能な限り強硬な姿勢を示しているように見えます。

空母により軍事圧力を再びかける策は、前回がかなり北朝鮮を震え上がらせるに役に立ったと評価されている以上、検討されていても不思議ではありません。

トランプ政権(と中国)は「ICBM」をレッドラインといっていた以上、自らの首を絞める結果になっています。もちろん、「」付きのICBMですが。

気になる点は二つ。まず、中ロ首脳会談・共同声明でのダブルフリーズ、韓国THAADミサイルへの言及。まあ、ロシアには中国の援護射撃と、グローバルにミサイル防衛に反対するという理由以上はないでしょう。

第2に、米韓首脳会談や韓国新政権の動き、米側有識者に見られる、北朝鮮との対話条件の緩やかな後退。ただ、これは日本の一部論調に見られる、北の核容認シナリオではなく、対話の条件(入り口)として核ミサイル実験の停止(または凍結)が考えられるようになったにすぎず、表現に正確さが必要かも知れません。最終的な核放棄の看板を下ろすという発言は、さすがに米韓とも誰も中から言っていないと思います。。。他方、米韓軍事演習の規模を縮減すべき、と話す韓国政権の要人発言は、すぐに大統領が否定したと言え、ダブルフリーズを匂わすものとして嫌な感じです。

そんな中、ニューヨークタイムズは、アメリカが北朝鮮への限定攻撃を受けた場合、韓国への北の反撃が引きおこす被害について記事を掲載。メディアお得意の薪をくべるやり方でしょう。

アメリカの「自制」を求めたいところですが、徐々に状況は「戦略的忍耐」へ回帰しているのではないか、とさえ言われるじり貧であり、「無策」との批判を交わすために次の一手は何か、それがトランプ政権の悩みどころといえます。北朝鮮も、米中関係も、7月は4月に続く節目になります。

悪化する対米認識 [雑感]

トランプ政権の誕生によって、明らかに世界のアメリカをみつめる視線は厳しさを増しています。

アメリカのピューリサーチは、6月下旬に最新の調査を発表しています。

好意的な見方が増えたのはロシアとイスラエルのみで、基本的には調査国でおしなべて減少傾向が見られます。(欧州、韓国、日本に比べると、フィリピン、インド、ベトナムが若干下がり幅が小さいです。)

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なお、調査は2月から5月にかけて行われており、どちらかというと、第一印象から、序盤の政権運営の混乱にかけて、というところです。

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ピューは、この傾向は特に西ヨーロッパ諸国に限定して、ブッシュJr政権と似ていると分析しています。

おそらく、それは表面的なデータの話であって、ブッシュ政権期に問われたのは「テロとの戦い」の合法性やアメリカの軍事介入のあり方でした。今は、アメリカそのものの信頼性、価値観、国際秩序へのコミットメントがより根深く問われていると思います。

そのあたりは、一般的な世論調査に加え、各国の政治エリートやオピニオンリーダーの調査も必要かも知れません。その点については、3月にパイロットを行った、今後3年間展開する私たちの研究プロジェクトで追求していきたいと思います。

この調査でほかに面白いことは、若者がよりアメリカへの好意的な見方を示していると言うこと。この傾向が多くの国に共通していることは興味深いです。

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突風のような米中の軋み [雑感]

前回の投稿と矛盾するようですが、今週は中国にとって最悪、としかいいようのない週です。

北朝鮮制裁で手ぬるいと批判され、人権報告書では北朝鮮と同じレベルに格付けされ、そして台湾への14億ドルの武器売却を国務省は議会に提出しました。怒濤の三連発です。

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ただ、これをどうみるべきか。

今週に研究会に来てもらった、あるアメリカ専門家は「変節点を超えた」と表現しました。

そのときには、私は7月こそ本当の正念場ではないか、とは答えたのですが(ここで大きく譲歩を引き出すための交渉材料としても圧力を強めているとの解釈)、その専門家の表現はもう後戻りできない(すなわち中国を見限った)ということを意味しています。

どちらなのか。

まだ分かりません。アメリカのビジネス、銀行や一部産業はまだ中国に利益がありますし、中国のアメリカへのFDIは400以上の選挙区に入っていると言います。

ただ、米中のバランスがどうも中国優位のペースになっていることへの危惧が、このような動きを作っているとは言えそうです。

誰が絵を描けているのか、それは全く分かりませんが。

他方では、第4のコミュニケとか、一つの中国政策の見直しとか、逆方向のことも噂されるなか、結局はいつも通りの潮目変化もあるかもしれません。。。分析のしようがない話です。

それにしても、今回のトランプの、女性キャスター批判はひどいものです。
いかに主流派メディアが嫌いでも、顔の整形措置をしたことをこういう風に批判するなど、人格を疑います(いまさら疑うのも何ですが、そういう日本語しかないのでしょうがない)。

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結構好きなイラストに、こういうものがあります。トランプの被害者の皆さまというものですが、女性、共和党、アメリカ(アンクルサム)、そして地球(気候変動に関するパリ条約の破棄)が並んでいるとパリ条約に関する決定を非難したものですが、、、女性こそ最初に並んだ「被害者」として相応しいと、改めて思いました。
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「トゥキディデスの罠」か「チェンバレンの罠」か? [雑感]

6月は、英語論文を一本仕上げつつ、非常に緊張感のある場で報告の機会を頂きました。

米中関係とアメリカの戦略、と題した報告では、冒頭に、5月末に出版された(英語)グラム・アリソン氏の新著に触れ、アメリカ外交における対中宥和の考えについて検討しています。トゥキディデスの罠を述べたアリソンは、中国の朝鮮半島での協力等と引き替えに、在韓米軍撤退や日韓へのMD供与見直し、南シナ海での立場見直しなど、さまざまに「ご提案」されています。

レジメは以下のように始めました。

1. 「トゥキディデスの罠」か「チェンバレンの罠」か? A) 激しい論争:G.アリソンへのA.ウォルドロンの批判 B) 宥和的措置への誘惑: J.スタインバーグ&オハンロン『戦略的再保障』、C.カプチャン『どのように敵国は友好国になるのか』 C) 歴史の教訓?:D.アチソンの失敗 D) ティラーソン発言:「一つの中国政策と今後の50年」 E) リアリストなど代表的知識人の「合理的な解」としての宥和と寛容さ?


アメリカには過去70年以上、中国を取り込めるのではないか、中国を変えられるのではないか、それが安上がりな政策ではないか、そうしなければ危険ではないか、といった議論が時に現れてきました。

それを提唱するのは、国務長官であったり、代表的な国際政治学者であったり。いずれにせよ、突拍子もない考えとして現れるのではなく、とびきりの知的エリートたちです。

中国に関心を持ったのは、初期には宣教師のこどもたちでした。最近に宥和的な発言をするものには中国専門家やビジネス利益がつながっている者も多いです。しかし、それよりも、最高学府と政権の頂点にいる、中国にさして知識もないものたちが宥和主義に陥る、その方がインパクトも大きいものです。

現象としては大変興味深いところはあります。インド政策にも、「誰しもインドに恋をする、しかし決して得られないものだ」という教訓があると言われますが、中国政策には趣は違いますが、何かがあるようです。前者はある種のオリエンタリズムの香りがしますが、中国に関してはプラグマティズムの香りもあるような気がしてはいます。

報告ではその後、冷戦期からオバマにいたるまでの論争、政策を簡単に振り返り、最後に以下のレジメにあるようにまとめました。(一部省略しています)

5.トランプに戦略はあるか? 中国的思考・レトリックへの巻き込まれ/ 相互に(相手の行動に)シェープされるという認識を持つことは日本のリスク / 米中和解の破綻はあるか、または「アメリカが中国を選ぶ日」が来るのか / 底流にある対中宥和主義 リアリズムによる正当化


米中関係は、今少し温度が冷めてきてはいますが、それでもかなり温かいのは事実。なにより、底流に流れる宥和志向は、政権(ティラーソンが一つの中国政策を今後50年維持するか見直しをしているとの発言)だけでなく、アメリカの知的コミュニティにも増えかねないことに更なる注意が必要だと思います。

それは、日本を取り巻くアジア秩序の根本的な変容を招く、アジアにとっての「チェンバレンの罠」*かもしれません。

追記:米中閣僚対話後、どうも米中にはすきま風という雰囲気が流れているようです。ただ、これが交渉レバレッジをあげるためのアメリカの策略なのか、仲違いの始まりなのかは不明です。他方で、中国からすれば、長期的にトランプ政権と上手くやれる可能性が高いとの確信は持てないため、早めに成果を固めるというアプローチはありそうです。次のハードルは人権問題、G20、そして米中首脳会談からの100日の期限です。

※ミュンヘン会談におけるチェンバレンの評価については当時の文脈でも理解すべきであり、チャーチル的史観を私が持っているわけではありません。一般的な比喩として、ウォルドロン氏が採用したものを援用しています。

4月危機を越えて朝鮮半島はどこに向かうのか [雑感]

表題の文章を翻訳したものを、『聯合早報』(シンガポール主要紙)に、また同趣旨のインタビューを『朝日新聞』のオピニオン欄「耕論」に恐れ多くも平岩先生と並ぶ形で掲載頂きました。末尾に、聯合早報の原文を掲載します。

4月25日の後、国務長官・国防長官等連名での声明やトランプ氏、国務長官、太平洋軍司令などの発言が相次いでいますが、メッセージはばらついており、安定していません(危機管理とみれば最悪です)。

一連の流れは国内アピールの側面も強く、国際安全保障が「私物化」されています。

三文芝居のようなブラフで問題が解決できるほど北朝鮮問題は簡単ではなく、オバマ大統領との引き継ぎの際に北朝鮮問題の難しさを説かれたはずのトランプ氏は、「やつが出来なかったのを俺は上手くやれる」とでも言いたいのでしょう。

核ミサイルがアメリカに「深刻な脅威」になるのがトランプ政権第1期の最中、とケリー国土保安長官は言明しました。これを日曜朝のテレビでいうというのは、ひとつの転換点ではあります。近隣諸国からみれば、最悪のキャストで、今後「長い危機」が続くことになると思います。


(聯合早報、原文)
 朝鮮半島の悪夢にうなされた4月が終わろうとしている。2月の日米首脳会談の最中にもミサイルを発射した北朝鮮は、米韓軍事演習が始まった3月には脅えを強い恫喝に移すように、ミサイル4発を日本海に同時に着弾させる。さらなる核ミサイル実験への動きも進めてきた。しかしそれ以上に目新しかったのは、トランプ政権が現状を打開しようと急速に動いたことだった。
 政権交代時に政策の根本的なレビューが行われることは、アメリカ外交ではよくあることだ。しかしトランプ政権は、オバマ政権の「戦略的忍耐」を否定して見せただけでなく、北朝鮮とのあまりに長い危機との決別を図ろうと強い意志を見せた。アメリカ政府が北朝鮮の非核化を目的に据えて積極的に行動することは歓迎すべきことだが、トランプ政権は北東アジアで続いてきたパターンを打ち破ろうとし、それが状況に流動性を生み出した。
 3月にメッセンジャーとして、ティラーソン国務長官は北東アジアを歴訪した。彼は「すべてのオプションがテーブルの上にある」として、安易に取引に応じず、完全で検証可能な非核化を目指して、まずは高圧姿勢をみせる。中国には2次制裁もちらつかせながら、対北朝鮮制裁をまったく異なるものにするように要請し、他方でこの時期中国が提案した、北朝鮮の核ミサイル開発停止とひき替えに米韓軍事演習を「凍結」する選択肢を拒絶した。過去20年間の政策を失敗と位置づけることで、安易に北朝鮮と対話に応じたり、経済支援を行ったりしないことも印象づけた。
 4月、トランプ氏とのいち早い会談で不安を払拭したいとフロリダに飛んだ習近平総書記は、アメリカのシリア政権へのミサイル攻撃というサプライズに驚かされる。化学兵器使用への人道的な目的がまず重要だったにせよ、トランプ政権はそれを北朝鮮と中国にみせつける材料につかった。祝賀行事に北朝鮮が国を挙げて取り組む4月を警戒し、アメリカは中国に圧力を行使するよう、最大限に脅しをかけ、また働きかけた。
 今月23日にケリー国家安全保障長官が述べたように、トランプ政権の4年間のあいだに核ミサイルが実用化に入る可能性は高まっていると米政府は見積もりを修正したようだが、いまだ数年あるともいえる。しかし、あたかも今月が山場であるようにトランプ政権は動き続けたのだった。そしてメディア報道もあって、危機が作られた。
 結果から見れば、金日成主席生誕105年や軍創建85年という祝賀にあわせて北朝鮮が大きく挑発行為を行った、とは言えない。6回目の核実験もなければ、はりぼてはパレードにお目見えしたにせよ、大陸間弾道弾が打ち上げられることはなかった。
 しかし、これがアメリカの脅しによる一定の効果だったとしても、アメリカは今後も軍事演習など圧力をかけ続けるだろう。本来の目的が非核化にあるからだ。
 米韓に加え、日米もこれまでにないレベルで演習を展開している。さらに北朝鮮へのサイバー攻撃も進展しているといわれるし、韓国への核兵器の再配備や北朝鮮のテロ支援国家への再指定など、オプションはホワイトハウス西棟の大統領執務室に積み上がっていると思われる。アジア太平洋政策は当面、海洋安全保障ではなく北朝鮮を中心的話題にするだろう。
 アメリカの北朝鮮政策は、米中関係を巻き込む形で明らかに次元をあげることになった。拳を振り上げたアメリカは、たしかな成果を得るまでは最早引き返せない。どこまでの成果を当面得たいのか、非核化へのロードマップを対話とどう組み合わせていくのか、トランプ政権は分かっていないようにも思えるのだが。
 トランプ氏は、褒め殺しと思われるほど、北朝鮮政策で中国の対応を最近ほめている。しかしこれは、北朝鮮を動かせなければ待ち受けている厳しい経済的な中国への締め付けを思い起こさせる、脅しだろう。トランプ政権の中枢で現実的な外交路線が力を増しているにせよ、圧力をかけることで中南海を動かそうというアプローチは変わらない。北朝鮮に行使できるカードが実のところ少ない中国にとって、この状態ほど心地悪いものはないだろう。米中首脳会談は100日プランを合意した。その締め切りの7月までに北朝鮮問題で前進をみせることは中国政府にとって経済金融での圧力回避のため必須だが、達成が極めて難しい宿題だ。救いがあるとすれば、もしこの難問を片付けることが出来れば当面米中関係は安泰と言うことだが、それは蜃気楼にみえるオアシスのようなものだ。
 日本と韓国は、もし有事が起きれば戦域として一体であり、米朝の激しい動きのなかで巻き込まれる恐怖を高めていた。日本にとっての救いは、安倍とトランプの関係の良さにも助けられて、米中首脳会談の前にも後にも、そして25日直前にも常にトランプから電話がかかってくることだ。おそらく安倍はトランプ氏に鍵となる中国を見捨てないように諫言を忘れなかったのではないか。日本では北朝鮮を攻撃する能力も持つべきだと勇ましい意見も増えてきたが、それは達成できるまでの時間がかかりすぎ、今の問題への対処とならない。当面はミサイル防衛システムの更なる配備が優先されるだろう。
 それにしても、どのように今後の危機は回避できるのだろうか。中国の制裁強化が強まれば、そして困窮した北朝鮮が自暴自棄になるのではなく生存を合理的に求めるようになれば、対話のテーブルに厳しい条件で戻ることに合意するかも知れない。非核化を前提にすれば、体制保証の上で平和条約に向けた動きや経済開発が視野に入ってくることを関係諸国は示すべきだろう。
 少なくとも、アメリカの姿勢を考えれば、北朝鮮が最初に折れない限り、状況の打開は難しいのかも知れない。アメリカは国連安保理も活用し始めるだろうし、中国への圧力期待は膨らんでいく。
 しかし、北朝鮮が核ミサイル開発の継続を諦められないとすれば、トランプ政権の「力による平和」はさらに次元をあげていく。脅しのためにさらに振り上げられた拳に、北朝鮮の若き指導者はさらなるチキンレースを挑むかも知れない。それは誰の利益にもならない。