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4月危機を越えて朝鮮半島はどこに向かうのか [雑感]

表題の文章を翻訳したものを、『聯合早報』(シンガポール主要紙)に、また同趣旨のインタビューを『朝日新聞』のオピニオン欄「耕論」に恐れ多くも平岩先生と並ぶ形で掲載頂きました。末尾に、聯合早報の原文を掲載します。

4月25日の後、国務長官・国防長官等連名での声明やトランプ氏、国務長官、太平洋軍司令などの発言が相次いでいますが、メッセージはばらついており、安定していません(危機管理とみれば最悪です)。

一連の流れは国内アピールの側面も強く、国際安全保障が「私物化」されています。

三文芝居のようなブラフで問題が解決できるほど北朝鮮問題は簡単ではなく、オバマ大統領との引き継ぎの際に北朝鮮問題の難しさを説かれたはずのトランプ氏は、「やつが出来なかったのを俺は上手くやれる」とでも言いたいのでしょう。

核ミサイルがアメリカに「深刻な脅威」になるのがトランプ政権第1期の最中、とケリー国土保安長官は言明しました。これを日曜朝のテレビでいうというのは、ひとつの転換点ではあります。近隣諸国からみれば、最悪のキャストで、今後「長い危機」が続くことになると思います。


(聯合早報、原文)
 朝鮮半島の悪夢にうなされた4月が終わろうとしている。2月の日米首脳会談の最中にもミサイルを発射した北朝鮮は、米韓軍事演習が始まった3月には脅えを強い恫喝に移すように、ミサイル4発を日本海に同時に着弾させる。さらなる核ミサイル実験への動きも進めてきた。しかしそれ以上に目新しかったのは、トランプ政権が現状を打開しようと急速に動いたことだった。
 政権交代時に政策の根本的なレビューが行われることは、アメリカ外交ではよくあることだ。しかしトランプ政権は、オバマ政権の「戦略的忍耐」を否定して見せただけでなく、北朝鮮とのあまりに長い危機との決別を図ろうと強い意志を見せた。アメリカ政府が北朝鮮の非核化を目的に据えて積極的に行動することは歓迎すべきことだが、トランプ政権は北東アジアで続いてきたパターンを打ち破ろうとし、それが状況に流動性を生み出した。
 3月にメッセンジャーとして、ティラーソン国務長官は北東アジアを歴訪した。彼は「すべてのオプションがテーブルの上にある」として、安易に取引に応じず、完全で検証可能な非核化を目指して、まずは高圧姿勢をみせる。中国には2次制裁もちらつかせながら、対北朝鮮制裁をまったく異なるものにするように要請し、他方でこの時期中国が提案した、北朝鮮の核ミサイル開発停止とひき替えに米韓軍事演習を「凍結」する選択肢を拒絶した。過去20年間の政策を失敗と位置づけることで、安易に北朝鮮と対話に応じたり、経済支援を行ったりしないことも印象づけた。
 4月、トランプ氏とのいち早い会談で不安を払拭したいとフロリダに飛んだ習近平総書記は、アメリカのシリア政権へのミサイル攻撃というサプライズに驚かされる。化学兵器使用への人道的な目的がまず重要だったにせよ、トランプ政権はそれを北朝鮮と中国にみせつける材料につかった。祝賀行事に北朝鮮が国を挙げて取り組む4月を警戒し、アメリカは中国に圧力を行使するよう、最大限に脅しをかけ、また働きかけた。
 今月23日にケリー国家安全保障長官が述べたように、トランプ政権の4年間のあいだに核ミサイルが実用化に入る可能性は高まっていると米政府は見積もりを修正したようだが、いまだ数年あるともいえる。しかし、あたかも今月が山場であるようにトランプ政権は動き続けたのだった。そしてメディア報道もあって、危機が作られた。
 結果から見れば、金日成主席生誕105年や軍創建85年という祝賀にあわせて北朝鮮が大きく挑発行為を行った、とは言えない。6回目の核実験もなければ、はりぼてはパレードにお目見えしたにせよ、大陸間弾道弾が打ち上げられることはなかった。
 しかし、これがアメリカの脅しによる一定の効果だったとしても、アメリカは今後も軍事演習など圧力をかけ続けるだろう。本来の目的が非核化にあるからだ。
 米韓に加え、日米もこれまでにないレベルで演習を展開している。さらに北朝鮮へのサイバー攻撃も進展しているといわれるし、韓国への核兵器の再配備や北朝鮮のテロ支援国家への再指定など、オプションはホワイトハウス西棟の大統領執務室に積み上がっていると思われる。アジア太平洋政策は当面、海洋安全保障ではなく北朝鮮を中心的話題にするだろう。
 アメリカの北朝鮮政策は、米中関係を巻き込む形で明らかに次元をあげることになった。拳を振り上げたアメリカは、たしかな成果を得るまでは最早引き返せない。どこまでの成果を当面得たいのか、非核化へのロードマップを対話とどう組み合わせていくのか、トランプ政権は分かっていないようにも思えるのだが。
 トランプ氏は、褒め殺しと思われるほど、北朝鮮政策で中国の対応を最近ほめている。しかしこれは、北朝鮮を動かせなければ待ち受けている厳しい経済的な中国への締め付けを思い起こさせる、脅しだろう。トランプ政権の中枢で現実的な外交路線が力を増しているにせよ、圧力をかけることで中南海を動かそうというアプローチは変わらない。北朝鮮に行使できるカードが実のところ少ない中国にとって、この状態ほど心地悪いものはないだろう。米中首脳会談は100日プランを合意した。その締め切りの7月までに北朝鮮問題で前進をみせることは中国政府にとって経済金融での圧力回避のため必須だが、達成が極めて難しい宿題だ。救いがあるとすれば、もしこの難問を片付けることが出来れば当面米中関係は安泰と言うことだが、それは蜃気楼にみえるオアシスのようなものだ。
 日本と韓国は、もし有事が起きれば戦域として一体であり、米朝の激しい動きのなかで巻き込まれる恐怖を高めていた。日本にとっての救いは、安倍とトランプの関係の良さにも助けられて、米中首脳会談の前にも後にも、そして25日直前にも常にトランプから電話がかかってくることだ。おそらく安倍はトランプ氏に鍵となる中国を見捨てないように諫言を忘れなかったのではないか。日本では北朝鮮を攻撃する能力も持つべきだと勇ましい意見も増えてきたが、それは達成できるまでの時間がかかりすぎ、今の問題への対処とならない。当面はミサイル防衛システムの更なる配備が優先されるだろう。
 それにしても、どのように今後の危機は回避できるのだろうか。中国の制裁強化が強まれば、そして困窮した北朝鮮が自暴自棄になるのではなく生存を合理的に求めるようになれば、対話のテーブルに厳しい条件で戻ることに合意するかも知れない。非核化を前提にすれば、体制保証の上で平和条約に向けた動きや経済開発が視野に入ってくることを関係諸国は示すべきだろう。
 少なくとも、アメリカの姿勢を考えれば、北朝鮮が最初に折れない限り、状況の打開は難しいのかも知れない。アメリカは国連安保理も活用し始めるだろうし、中国への圧力期待は膨らんでいく。
 しかし、北朝鮮が核ミサイル開発の継続を諦められないとすれば、トランプ政権の「力による平和」はさらに次元をあげていく。脅しのためにさらに振り上げられた拳に、北朝鮮の若き指導者はさらなるチキンレースを挑むかも知れない。それは誰の利益にもならない。

日経・書評 [雑感]

論文「対外政策:アジア外交の安全保障化」を収めて頂いた、竹中治堅編『二つの政権交代』(勁草書房、2017年)について、京都大学の待鳥聡史先生による書評が日本経済新聞に掲載されました。[わーい(嬉しい顔)]

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(拙稿を除き)とても素晴らしい論文が詰まっています。そして何よりも、すべての論文が一つのテーマ、すなわち自民、民主の政権交代でも多くの分野で政策は実は共通している、という仮説をめぐる形で統一されています。政治学者の仕事として、議論を重ねました。

サントリー文化財団様より暖かい助成を頂いて完成したものです。勁草書房の担当編集者Uさんには、いつも変わらない、素晴らしい編集をして頂きました。

書店や図書館でお手にとって頂ければと思います。


共同研究スタート [雑感]

新しく合同研究をスタートさせることになり、3月末に8名の海外ゲストを招きパイロット会議を横浜、本学で開きました。

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翌日は横須賀を訪れ、護衛艦いかづちを案内していただき、いづもの入港を見守り、午後はキム基地司令の案内で、空母ロナルドレーガンに乗ってきました。

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プロジェクトでは、アメリカを同盟国がどうみているのか、トランプ限定せず、深く学問的に掘り下げる予定です。オーストラリア国立大のイベリンゴー教授をアドバイザーに迎え、私がリードします。三年をかける長いプロジェクトですが、成果をきっちり出せるように精進したいと思います。

こうやってみると、本学会議室は眺めが良い!

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一つの中国政策(再び) [雑感]

ティラーソン国務長官が訪中した際、「相互尊重」「Win-Win」など中国政府がかねて主張してきた言葉を米中関係を表現する言葉として使用したことが話題になっています。

直後から、アメリカの中国専門家(元政府高官を含む)はツイッターで大騒ぎで、ワシントンポストなどメディアも批判に合流している感があります。

とくに「相互尊重」には中国政府の言う核心的利益、チベット香港、台湾でアメリカ政府が従来の政策を見直し、中国政府に擦り寄ったのではないか(北朝鮮問題や貿易金融など表に出てこない話と取引で?)、との疑心暗鬼を生みました。事実、中国の官製メディアは今回の米中会談を中国の外交的勝利と報道しています。

ここまでは薄く日本でも報道されているのでよいのですが、今週月曜日の国務省定例記者会見でトナー報道官(代行)は面白いことを言っています。

アメリカ政府の台湾に関する立場はますます強固な両岸関係を奨励するものであり、アメリカ政府は(従来の)「一つの中国」政策を維持する(stand by)


また新しい言葉が出てきたのです。スタンバイ。汗

トランプ・習近平電話協議後の発表がhonor 尊重するだったことを解説したときに、honorは法律的に強い言葉だと踏み込んで理解する方もいました。しかし、honorの読み込みすぎはよろしくないと方々で言ってきたのですが(そもそもone china policyの中身が中国人の立場を認識したに過ぎないということも含め)、今回のこの報道官の表現で、stand byと言い換えれる程度だということがわかります。

訳し方は難しいのは認めますが、いずれにせよ、維持/支持するというもので、完全に保証するようなものとは訳せません。

このあたりのニュアンスを是非、皆さまくみ取って欲しいと思います。


北朝鮮とアメリカ [雑感]

明日のNHK・日曜討論に出席します。

おそらく、このブログに初めて来られる視聴者の方もいると思います。
このブログは、私の個人的な雑感や出張記録を目的にしており、専門的知見を提供するためのものではありません。その点をご了承ください。

また私の専門分野はアメリカと東アジアの関係を中心とした、東アジアの国際政治です。9年前に提出した博士論文はアメリカが中国、台湾(中華民国)に1948~1978までどのような政策をとったのか、それを説明するものでした。(『共存の模索』勁草書房、2015年)その後、米中関係を軸にしつつ、東南アジアを含む東アジアの安全保障について、広く研究を重ね、論文を書いてきました。オフィシャル・ウェブサイトなどで論文やエッセイはご確認ください。また英語での執筆、報告が全体の努力の半分ほどを占めています。

北朝鮮に関しては、これまでも幾つかの研究プロジェクトでかかわってきていますが、現在は全米アジア研究所(NBR)の日米韓三カ国協力プロジェクトの共同ディレクター(第2・3フェーズ)を務めています。

今週も、ソウル、東京ワークショップを開催、おおよそ50名くらいの政府・軍関係者、専門家と意見交換をしてきたところです。

私の専門性はあくまでもアメリカの視点を深く理解していることだと思いますので、日曜討論でもそれを中心に、専門的に研究してきた内容で答えられる範囲で答えます。評論家ではないので、その点は明確に自覚しており、注がつけられない発言・分析はしておりません。

またトランプ政権については2月27日月曜日、日経の経済教室に3千字の論考を掲載しておりますので、ご笑覧頂ければと思います。米中関係についても、以前のブログで、公研2月号のながい対談をPDFにてご提供しています。

アメリカの北朝鮮政策にご関心を持たれた方は、ドン・オーバードーファの『二つのコリア』の最新版をお勧めします。またエバンズ・リビア元国務次官補(代行)のこの論考は、12月のものですが現在の動きを理解するために必要な補助線を引いてくれています。強硬路線の具体像、背景にある現状認識や政策目標がつかめると思います(もちろん政権と同じ、ということを言っているのではありません。ただ、補助線として、とてもよいです。)

pdf" target="_blank">https://www.ncafp.org/2016/wp-content/uploads/2016/12/Revere_North-Korean-Nuclear-Challenge.pdf

逆に、トランプ政権の考えとは全然違うと思いますが、ハース外交問題評議会理事長もこの金曜日に米朝対話を重視した、このような論考を書いています。

https://www.project-syndicate.org/commentary/north-korea-strategic-options-by-richard-n--haass-2017-03

いずれにせよ、北のミサイル、核開発へのアメリカの警戒心はかなり高まっています。中国を動かすためもありますが、先制・予防攻撃や2次制裁(北朝鮮と取引のある中国企業への制裁)を匂わすのも意外ではありません。

検証可能な非核化を前提にしなければ、アメリカは北との関係を前進させないでしょう。リビア氏も、核ミサイル開発の継続が体制の安定性を高めるのではなく、むしろ低めると確信させる、そこに目標を見いだしています。

ただし、北がそれに乗ってくるとはなかなか思えず、中国も問題の解決を妨げ続けるでしょうから、当面日本としては、守りを固め(ミサイル防衛)、そのためにも日米韓の連携を強めるのが、これまで以上の深さと速さで重要になってくる、そう思っています。

ルポを読む [雑感]

 東大や早稲田を目指す若い留学生の声から伝わる、90年代生まれの中国人の世界観。
 ニューヨークから車を走らせ、ラストベルトからアパラチア山脈の寂れた街を歩き回って出会った、トランプ支持者の世界観。
 対照的なものを映しているようで、しかしこれが今日という同じ日にあると考えると、不思議で、面白くてしょうがない。それぞれの国で主流だとは思えないけれど、だからこそイメージを破壊してくれる。

 ふと、畏友宮地ゆうの「シリコンバレーで起きている本当のこと」を読んだときを思い出した。筆力のある書き手は、社会の気づかない側面や、言葉に出来なかった考えを見事に表現してくれる。
 優れたルポほど、読み終えたときに感謝の念がこみ上げてくる。そして興奮する。

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経済教室 トランプ外交をよむ [雑感]

日経の経済教室トランプ外交の解説が掲載されました。

経済教室 トランプ外交をよむ 政権中枢、省庁の調整が鍵」『日本経済新聞』2017年2月27日。

一週間前に入稿している原稿なので、先週木曜日のロイター通信によるトランプ氏へのインタビューメディア締め出しが報道され、さして新しい内容に感じられないかも知れません涙

トランプ外交を全体としてどう捉えればよいのか、一段だけ抽象化した解説くらいに読んで頂ければと思います。

もっと小ネタや大胆な予測をしてもよかったのですが、日米安保見直しも、とか若手は怖くてかけません(木曜の添谷先生の経済教室)。

米中関係のパイプはクシュナーで崔駐米大使と頻繁に接触とか、トランプは電話協議後にとても満足していたとか、台湾問題でつぎに撃たれるタマはこれだろうとか、

バノンとロシアとか、マティスのイラン嫌いとか、ナバロの機能不全とか、

ティラーソン国務長官も存在感薄いが、これだけは共和党のある意味伝統(国務長官はあまり機能しない)とか、

日米会談をうけて防衛協力の任務・役割・能力の見直しが起きるが、隣接国重視の日本とそれを越えた発想のアメリカで同床異夢になるかもとか、けど北朝鮮だけはそれを日米がそれぞれ自国のために利用して、一気に色々事を進めかねるかもとか、

こういった背景や予想を書いてもよかったのですが、全体的にオーソドックスなまとめ方に留めました。全体として何が起きているかの解説を優先させたかったためです。

すべての箇所に文献注が打てるほど、資料を読んで作っています。

いずれにせよ、トランプ外交を孤立主義とか断罪することはもうやめにした方がよい、というメッセージは込めたつもりです。自国優先主義であっても、世界には関わる。ただ、我々と全く違った世界をみている人間が多い、ということが大切なんだと思います。

オバマ時代から振り返りつつ、米中関係とアジアの今後を展望した対談を行いました。川島先生の胸を借りた一時間でした。通であれば知っている良質な雑誌『公研』から。許可を経て、以下から読めます。

対談「トランプ政権と米中関係(川島真・東京大学教授と)」『公研』2017年2月号、38-54頁。

米中電話会談と「一つの中国」 [雑感]

トランプ・習電話会談(17.2.9)で「一つの中国」政策を「尊重する(honor)」という表現が報道で取り上げられています。

正確には「アメリカ政府の従前の(our)」一つの中国政策を尊重すると言っています。その意味が分かる人は少ないのかな、と思いました。日本の新聞報道は少し不正確、アメリカでもイマイチな書きぶりです。(アメリカ政府は従来の政策を継続する方向、という書き方はOK)

学者の仕事かな、と思うので、(誰も見ないような気がしますが)少し解説します。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents-call-president-xi-jinping-china

今回のホワイトハウスのリリースにある、
President Trump agreed, at the request of President Xi, to honor our "one China" policy. (トランプ大統領は習近平国家主席の求めに応じ、アメリカ政府の従前の『一つの中国』政策を尊重することに合意した)


という文面は、中国政府が考えているような一つの中国原則をアメリカが受け入れたことは全く意味しておらず、アメリカ政府の従前の立場(一つの中国政策)を、さらに尊重(honor)しただけです。

Honorの定義はto regard or treat (someone) with admiration and respect (Webster)であって、Chinese position(両岸の中国人の立場)をacknowledge(認識)したもの(78コミュニケ=従前の立場)を、「案外よいものだよね(尊重します)」としているだけです。

これを中国外交の勝利とか言っている中国人研究者は、正直終わっているような気がします。(NYTなどに引用)習近平さんを讃えれば御用学者としての責務を果たせるのでしょうが。

追記2.13 ourが米中両政府ではないか、との指摘がありましたが、一つの中国政策はアメリカのものであり、中国は原則と表記するのであり得ません。

追記2.13
honor/ acknowledgeの定義についてコメントを頂きました。honorはもっと強い、acknowledgeも認識といっても権威を認めているというものです。事実、acknowledgeはhonorよりは強いし、take noteよりは遥かに強い。しかし、承認でも受け入れでも決してありません。honorの定義は上に上げたもの以上ではないです。

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それでは、アメリカ政府の従前の立場(78コミュニケ)とは何か。

日本では78コミュニケもおそらく不正確な理解が一般に流通している(その原因は外務省仮訳にも起因していると思っています)ため、最近の展開が十分に理解できていないような気がします。

すでに著書『共存の模索』でも指摘してあるのですが、(中国政府を承認し、台湾の中華民国との関係を断交、台湾との経済社会関係を非政府で維持することに加え)、アメリカは[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国『人』(Chinese)の立場を認識した(acknowledge)、というのが正確な「一つの中国」政策の立場です。

中国人、という表現は72年のコミュニケにあった両岸全ての中国人(=大陸と台湾をともに含む)からつながっている表現です。

中国政府は(アメリカ政府が)中国的立場を承認と訳したので、もう無茶苦茶(二重に間違っている)なのですが、日本政府仮訳も「中国の」立場、と訳してしまったのです。正確には中国人の立場という72コミュニケの理解をアメリカ政府は変えていないにもかかわらず。

最近、WSJでボルトン元国務次官(ついに国務副長官の夢は断たれたようですが)が「中国人の立場を認識したと言っても台湾は今や台湾人の国だ」と大胆な発言をしたところですが、ここでも「中国人」と理解されています。それでいいのです。(このボルトンさんのコラムは在沖米軍の台湾移転のところばかり注目されてしまい、とても日本的なのですが、本旨の理解が不十分です。)

なお、本当かよ、と思う方は、アメリカ政府で長く中国、台湾政策を扱い、責任者(AIT)を務め、ブルッキングス研究所北東アジア研究所長をずっとされているリチャード・ブッシュさんの本を読んでください。

繰り返しですが、中国政府の一つの中国原則をアメリカ政府が受け入れた/承認したなんていうことは過去も今回もないし、これからもないでしょう。

追記2.13
なお、アメリカ政府内でコミュニケ原案が作成されたのは77.7であり、その際には[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国人の立場を受け入れる(accept)という表記がありました。これを認識(acknowledge)に修正したのは(さらに台湾は中国の一部を削除:のちに官僚が再挿入)ブレジンスキー大統領補佐官です。ブレジンスキーは、今や中国の友人の顔をしてますが、かなりのエピソードを著作のなかで紹介しておきました。

追記2.13
今回の流れを作ったのは、ティラーソン国務長官、および(楊国務委員と電話で話した)フリン大統領補佐官と報道されています。ティラーソン長官の上院議員への回答書も台湾問題で従来の立場を(ある意味で必要以上に)強調しているので、適時ブログでもフォローしていきたいと思います。

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電話会談翌日のピューリサーチの調査報告は面白いです。

アメリカにおける中国認識が著しく悪化しているという内容。過去10年で、ざっくり20%は悪化しています。党派制よりも、世代間の差が大きく、高齢になるほど中国認識が厳しいようです。

http://www.pewresearch.org/fact-tank/2017/02/10/americans-have-grown-more-negative-toward-china-over-past-decade/

共和党支持者のあいだではどうも、ロシアよりも中国を見つめる目が厳しいという結果もほかのピュー調査ではでています。

米中関係にあまり楽観の材料はない、と思います。別に一般的な中国の方々が楽観される分にはいいのですが、軍や最高指導部が変な楽観をして、西太平洋で暴れないで欲しいと、切に願います。トランプ=張り子の虎説が様々な中国人によって流布されていることは、何とも危険です。

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最近、トランプ政権と米中関係について、少しだけ解説をする機会が増えました。

東洋経済、2月4日号 74-5頁 (3回引用)
公研 2月号 38-54頁 対話:トランプ政権と米中関係(川島真・東大教授の胸を借りた対談)

今は少し大きめな解説を書いています。当たるも八卦当たらぬも八卦。。。

学期終わりにバタバタと。 [雑感]

重なるときは重なるもので、入試、今学期の最後の講義の合間に、3件のシンポジウム/講演会のコーディネートを1週間でやっていました。。

先週木曜:『東アジアの社会運動から考える“民主主義”の行方 ―台湾・香港・韓国・沖縄・日本―』      
 その名の通り、台湾、香港韓国から研究者をお呼びして、また日本からも高千穂大の五野井さんにお越し頂いて、社会運動、デモ、抗議活動が噴出している今をどう捉えるべきか議論してもらいました。学術的にとても面白いテーマなのですが、討論の時間が極めて限られてしまったのに企画側として反省しきりです。それぞれのプレゼンは抜群に面白かったです。参加者は延べで200名くらい。
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今週月曜:『トランプ政権でどうなる!?アメリカ政治外交の仕切り直しと世界の動揺
 もうタイトルのつけようがないので、こうなりました。首都大の梅川君、本学に着任した上先生から大統領権限で何が出来るのか、移民問題をどう捉えるべきか、外交はどうなるということを議論しました。スタンフォードで定番の、ランチタイムからはじまるスタイルを導入。質問がひっきりなしだったので、話の方向性は悲観的ですがよしとしたいです。(我々から滲み出る反トランプ臭は消しようがなかったようではあります。)参加者は約100名。

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今週火曜:『東アジア秩序と中日関係
 月曜の午後からは上海・同済大学の鐘振明先生を招へいしました。上のシンポジウムをやっている間に鐘先生が羽田到着というスケジュール。月曜は馬車道の夜に。火曜はお昼は神楽坂・市ヶ谷で今をときめく2人の研究者にあってもらい、夕方は神大に戻り、講演会。鐘先生はBrookings、SAIS両方でそれぞれ1年過ごしたばかりの、アメリカ専門家。私たちの研究グループ(東アジアの安全保障秩序)は学内・外の若手から構成されていますが、とても大きな刺激をもらいました。初めての訪日なので、夏に上海でお世話になったことのお返しに少しでもなればと思いました。

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シンポの講演会も、想定以上に聴衆が多くて、とてもよかったです。どうだ、神大も頑張っているだろう、箱根駅伝の勢いに乗って今年はがんがんと行くぞ、と。しかし、いかんせん、疲れました。

今日は神大が受け入れているタスマニア大の学生たちへの特別講義、明日は尊敬する先生との対談、トランプに関する講演、日ロ関係の勉強会司会、金曜もうちあわせ4件とか、普段暇(!)なのにいったいなんだかわかりませんが、頑張ります。

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2016年の研究を振り返って [雑感]

2016年は、15年末に単著を無事に出したこともあり、中長期的視野に立って「次の仕込み」をする時期になりました。

8月末に体調を崩したこともあり、海外出張を絞り込み、10回/55日と例年の半分、この10年でもっとも日本にいました。その代わりに日本で集中して研究、教育が出来ました。日本で行われる会議や意見交換をもっと丁寧に参加するようにもなり、研究面での支障もあまり感じなかったので、これでいいような気がしてきました。

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【研究プロジェクト】
主査を務めるプロジェクトを国内、国際それぞれ1つ立ち上げつつあり、今後3-4年で成果をだしていく予定です。来年度にキューバ(3月に学術交流で訪問)との大規模な交流をするための補助金も獲得しました。さらにスタンフォード大学の日米同盟プロジェクトを5月に立ち上げ、カール・アイケンベリー教授と今後も続けていく予定です。

【論文】
「対外政策:アジア外交の安全保障化」が来年早々に出版されます。これは日本外交・安全保障政策について10年前に冷戦終結から小泉政権まで書いたものの続編として、第1次安倍政権から民主党、そして2・3次安倍政権と一貫して日本の安全保障政策がアジア外交との接点を求めてきた過程と、その背景にある対中政策について論じています。(本も御厨編『変貌する日本政治』の後継企画として、サントリー文化財団の助成をいただいた竹中班の企画です。)

またグリフィス大学(豪州)の企画でUS Primacy in the Asia-Pacificという編書への寄稿論文をドラフト。来年に入稿、Edward Elger(英国)より出版の流れです。短いものは本年春にオーストラリア国立大で発表、出版して、本人の予想を超えて好評でした。最近もオーストラリアン紙(現地最有力紙)に何カ所か引用されていました。

日本国際政治学会で発表した「アメリカは中国の権力をどのように捉えているのか」という論文は、下敷きは日本国際問題研究所「米中関係班」の研究です。(同研究所のコラム「アメリカにおける戦略議論と中国」参照。)この論文ではオバマ政権で中国政策が変容していること、対中認識は最後のところで踏みとどまっていることを示しているのですが、フレームワークが欲しいと思っていたところにトランプの登場で、そもそもこれを今まとめる必要があるのか、この2ヶ月悩みが深まっています。。

【講義】
本務校でのゼミでは3年生にアクティブ・ラーニングを徹底、かなり成功したと思います。反省点も勿論あり、来年の3年生ではさらに工夫をしてみたいと思います。講義の内容を本格的に見直したいのですが、それは来年度の課題にしたいと思います。

一橋大学で学部向け「国際安全保障」を新たに担当、100名強の学生のノリがよかったのが印象的でした。上智大学では英語学科で「アメリカとアジア太平洋」を英語講義する2年目。各学期1つずつの非常勤からも様々な刺激をもらっています。総じて、学部講義ではこれまで基礎を重視してきたところ、中級レベルにももっと取り組もうと感じるようになりました。

【社会貢献】
今年は官公庁、研究機関、民間企業、市民講座、異なる地方の大学、湘南の高校と、様々なところでお話しさせて頂く機会を頂きました。「激動期の国際政治」はいつも使われる便利なフレーズですが、今年ほどこの言葉が相応しい年もなかったと思います。世界を分析する道具を少しでも伝えることができていれば、と願っています。

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来年は、米中関係について1972-78年に形成された和解が「破綻」していく過程を勉強したいと思いますし、東アジア秩序論についても骨太な議論ができるように勉強を続けたいと思っています。まずは1月、誰にも頼まれていない書評原稿のためにVictor Cha(2016)を読み込む予定です。

教育も新しいことを色々と試していきたいと思います。まずは申請が通った電子黒板の使い方に慣れないと[ダッシュ(走り出すさま)]

研究、教育に誠心誠意取り組み続ける1年にしたいと思います。

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