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北朝鮮とアメリカ [雑感]

明日のNHK・日曜討論に出席します。

おそらく、このブログに初めて来られる視聴者の方もいると思います。
このブログは、私の個人的な雑感や出張記録を目的にしており、専門的知見を提供するためのものではありません。その点をご了承ください。

また私の専門分野はアメリカと東アジアの関係を中心とした、東アジアの国際政治です。9年前に提出した博士論文はアメリカが中国、台湾(中華民国)に1948~1978までどのような政策をとったのか、それを説明するものでした。(『共存の模索』勁草書房、2015年)その後、米中関係を軸にしつつ、東南アジアを含む東アジアの安全保障について、広く研究を重ね、論文を書いてきました。オフィシャル・ウェブサイトなどで論文やエッセイはご確認ください。また英語での執筆、報告が全体の努力の半分ほどを占めています。

北朝鮮に関しては、これまでも幾つかの研究プロジェクトでかかわってきていますが、現在は全米アジア研究所(NBR)の日米韓三カ国協力プロジェクトの共同ディレクター(第2・3フェーズ)を務めています。

今週も、ソウル、東京でワークショップを開催、おおよそ50名くらいの政府・軍関係者、専門家と意見交換をしてきたところです。

私の専門性はあくまでもアメリカの視点を深く理解していることだと思いますので、日曜討論でもそれを中心に、専門的に研究してきた内容で答えられる範囲で答えます。評論家ではないので、その点は明確に自覚しており、注がつけられない発言・分析はしておりません。

またトランプ政権については2月27日月曜日、日経の経済教室に3千字の論考を掲載しておりますので、ご笑覧頂ければと思います。米中関係についても、以前のブログで、公研2月号のながい対談をPDFにてご提供しています。

アメリカの北朝鮮政策にご関心を持たれた方は、ドン・オーバードーファの『二つのコリア』の最新版をお勧めします。またエバンズ・リビア元国務次官補(代行)のこの論考は、12月のものですが現在の動きを理解するために必要な補助線を引いてくれています。強硬路線の具体像、背景にある現状認識や政策目標がつかめると思います(もちろん政権と同じ、ということを言っているのではありません。ただ、補助線として、とてもよいです。)

https://www.ncafp.org/2016/wp-content/uploads/2016/12/Revere_North-Korean-Nuclear-Challenge.pdf

逆に、トランプ政権の考えとは全然違うと思いますが、ハース外交問題評議会理事長もこの金曜日に米朝対話を重視した、このような論考を書いています。

https://www.project-syndicate.org/commentary/north-korea-strategic-options-by-richard-n--haass-2017-03

いずれにせよ、北のミサイル、核開発へのアメリカの警戒心はかなり高まっています。中国を動かすためもありますが、先制・予防攻撃や2次制裁(北朝鮮と取引のある中国企業への制裁)を匂わすのも意外ではありません。

検証可能な非核化を前提にしなければ、アメリカは北との関係を前進させないでしょう。リビア氏も、核ミサイル開発の継続が体制の安定性を高めるのではなく、むしろ低めると確信させる、そこに目標を見いだしています。

ただし、北がそれに乗ってくるとはなかなか思えず、中国も問題の解決を妨げ続けるでしょうから、当面日本としては、守りを固め(ミサイル防衛)、そのためにも日米韓の連携を強めるのが、これまで以上の深さと速さで重要になってくる、そう思っています。

ルポを読む [雑感]

 東大や早稲田を目指す若い留学生の声から伝わる、90年代生まれの中国人の世界観。
 ニューヨークから車を走らせ、ラストベルトからアパラチア山脈の寂れた街を歩き回って出会った、トランプ支持者の世界観。
 対照的なものを映しているようで、しかしこれが今日という同じ日にあると考えると、不思議で、面白くてしょうがない。それぞれの国で主流だとは思えないけれど、だからこそイメージを破壊してくれる。

 ふと、畏友宮地ゆうの「シリコンバレーで起きている本当のこと」を読んだときを思い出した。筆力のある書き手は、社会の気づかない側面や、言葉に出来なかった考えを見事に表現してくれる。
 優れたルポほど、読み終えたときに感謝の念がこみ上げてくる。そして興奮する。

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経済教室 トランプ外交をよむ [雑感]

日経の経済教室にトランプ外交の解説が掲載されました。

経済教室 トランプ外交をよむ 政権中枢、省庁の調整が鍵」『日本経済新聞』2017年2月27日。

一週間前に入稿している原稿なので、先週木曜日のロイター通信によるトランプ氏へのインタビューやメディア締め出しが報道され、さして新しい内容に感じられないかも知れません涙

トランプ外交を全体としてどう捉えればよいのか、一段だけ抽象化した解説くらいに読んで頂ければと思います。

もっと小ネタや大胆な予測をしてもよかったのですが、日米安保見直しも、とか若手は怖くてかけません(木曜の添谷先生の経済教室)。

米中関係のパイプはクシュナーで崔駐米大使と頻繁に接触とか、トランプは電話協議後にとても満足していたとか、台湾問題でつぎに撃たれるタマはこれだろうとか、

バノンとロシアとか、マティスのイラン嫌いとか、ナバロの機能不全とか、

ティラーソン国務長官も存在感薄いが、これだけは共和党のある意味伝統(国務長官はあまり機能しない)とか、

日米会談をうけて防衛協力の任務・役割・能力の見直しが起きるが、隣接国重視の日本とそれを越えた発想のアメリカで同床異夢になるかもとか、けど北朝鮮だけはそれを日米がそれぞれ自国のために利用して、一気に色々事を進めかねるかもとか、

こういった背景や予想を書いてもよかったのですが、全体的にオーソドックスなまとめ方に留めました。全体として何が起きているかの解説を優先させたかったためです。

すべての箇所に文献注が打てるほど、資料を読んで作っています。

いずれにせよ、トランプ外交を孤立主義とか断罪することはもうやめにした方がよい、というメッセージは込めたつもりです。自国優先主義であっても、世界には関わる。ただ、我々と全く違った世界をみている人間が多い、ということが大切なんだと思います。

オバマ時代から振り返りつつ、米中関係とアジアの今後を展望した対談を行いました。川島先生の胸を借りた一時間でした。通であれば知っている良質な雑誌『公研』から。許可を経て、以下から読めます。

対談「トランプ政権と米中関係(川島真・東京大学教授と)」『公研』2017年2月号、38-54頁。

米中電話会談と「一つの中国」 [雑感]

トランプ・習電話会談(17.2.9)で「一つの中国」政策を「尊重する(honor)」という表現が報道で取り上げられています。

正確には「アメリカ政府の従前の(our)」一つの中国政策を尊重すると言っています。その意味が分かる人は少ないのかな、と思いました。日本の新聞報道は少し不正確、アメリカでもイマイチな書きぶりです。(アメリカ政府は従来の政策を継続する方向、という書き方はOK)

学者の仕事かな、と思うので、(誰も見ないような気がしますが)少し解説します。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents-call-president-xi-jinping-china

今回のホワイトハウスのリリースにある、
President Trump agreed, at the request of President Xi, to honor our "one China" policy. (トランプ大統領は習近平国家主席の求めに応じ、アメリカ政府の従前の『一つの中国』政策を尊重することに合意した)


という文面は、中国政府が考えているような一つの中国原則をアメリカが受け入れたことは全く意味しておらず、アメリカ政府の従前の立場(一つの中国政策)を、さらに尊重(honor)しただけです。

Honorの定義はto regard or treat (someone) with admiration and respect (Webster)であって、Chinese position(両岸の中国人の立場)をacknowledge(認識)したもの(78コミュニケ=従前の立場)を、「案外よいものだよね(尊重します)」としているだけです。

これを中国外交の勝利とか言っている中国人研究者は、正直終わっているような気がします。(NYTなどに引用)習近平さんを讃えれば御用学者としての責務を果たせるのでしょうが。

追記2.13 ourが米中両政府ではないか、との指摘がありましたが、一つの中国政策はアメリカのものであり、中国は原則と表記するのであり得ません。

追記2.13
honor/ acknowledgeの定義についてコメントを頂きました。honorはもっと強い、acknowledgeも認識といっても権威を認めているというものです。事実、acknowledgeはhonorよりは強いし、take noteよりは遥かに強い。しかし、承認でも受け入れでも決してありません。honorの定義は上に上げたもの以上ではないです。

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それでは、アメリカ政府の従前の立場(78コミュニケ)とは何か。

日本では78コミュニケもおそらく不正確な理解が一般に流通している(その原因は外務省仮訳にも起因していると思っています)ため、最近の展開が十分に理解できていないような気がします。

すでに著書『共存の模索』でも指摘してあるのですが、(中国政府を承認し、台湾の中華民国との関係を断交、台湾との経済社会関係を非政府で維持することに加え)、アメリカは[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国『人』(Chinese)の立場を認識した(acknowledge)、というのが正確な「一つの中国」政策の立場です。

中国人、という表現は72年のコミュニケにあった両岸全ての中国人(=大陸と台湾をともに含む)からつながっている表現です。

中国政府は(アメリカ政府が)中国的立場を承認と訳したので、もう無茶苦茶(二重に間違っている)なのですが、日本政府仮訳も「中国の」立場、と訳してしまったのです。正確には中国人の立場という72コミュニケの理解をアメリカ政府は変えていないにもかかわらず。

最近、WSJでボルトン元国務次官(ついに国務副長官の夢は断たれたようですが)が「中国人の立場を認識したと言っても台湾は今や台湾人の国だ」と大胆な発言をしたところですが、ここでも「中国人」と理解されています。それでいいのです。(このボルトンさんのコラムは在沖米軍の台湾移転のところばかり注目されてしまい、とても日本的なのですが、本旨の理解が不十分です。)

なお、本当かよ、と思う方は、アメリカ政府で長く中国、台湾政策を扱い、責任者(AIT)を務め、ブルッキングス研究所北東アジア研究所長をずっとされているリチャード・ブッシュさんの本を読んでください。

繰り返しですが、中国政府の一つの中国原則をアメリカ政府が受け入れた/承認したなんていうことは過去も今回もないし、これからもないでしょう。

追記2.13
なお、アメリカ政府内でコミュニケ原案が作成されたのは77.7であり、その際には[中国は一つであり、台湾は中国の一部という]中国人の立場を受け入れる(accept)という表記がありました。これを認識(acknowledge)に修正したのは(さらに台湾は中国の一部を削除:のちに官僚が再挿入)ブレジンスキー大統領補佐官です。ブレジンスキーは、今や中国の友人の顔をしてますが、かなりのエピソードを著作のなかで紹介しておきました。

追記2.13
今回の流れを作ったのは、ティラーソン国務長官、および(楊国務委員と電話で話した)フリン大統領補佐官と報道されています。ティラーソン長官の上院議員への回答書も台湾問題で従来の立場を(ある意味で必要以上に)強調しているので、適時ブログでもフォローしていきたいと思います。

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電話会談翌日のピューリサーチの調査報告は面白いです。

アメリカにおける中国認識が著しく悪化しているという内容。過去10年で、ざっくり20%は悪化しています。党派制よりも、世代間の差が大きく、高齢になるほど中国認識が厳しいようです。

http://www.pewresearch.org/fact-tank/2017/02/10/americans-have-grown-more-negative-toward-china-over-past-decade/

共和党支持者のあいだではどうも、ロシアよりも中国を見つめる目が厳しいという結果もほかのピュー調査ではでています。

米中関係にあまり楽観の材料はない、と思います。別に一般的な中国の方々が楽観される分にはいいのですが、軍や最高指導部が変な楽観をして、西太平洋で暴れないで欲しいと、切に願います。トランプ=張り子の虎説が様々な中国人によって流布されていることは、何とも危険です。

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最近、トランプ政権と米中関係について、少しだけ解説をする機会が増えました。

東洋経済、2月4日号 74-5頁 (3回引用)
公研 2月号 38-54頁 対話:トランプ政権と米中関係(川島真・東大教授の胸を借りた対談)

今は少し大きめな解説を書いています。当たるも八卦当たらぬも八卦。。。

学期終わりにバタバタと。 [雑感]

重なるときは重なるもので、入試、今学期の最後の講義の合間に、3件のシンポジウム/講演会のコーディネートを1週間でやっていました。。

先週木曜:『東アジアの社会運動から考える“民主主義”の行方 ―台湾・香港・韓国・沖縄・日本―』      
 その名の通り、台湾、香港、韓国から研究者をお呼びして、また日本からも高千穂大の五野井さんにお越し頂いて、社会運動、デモ、抗議活動が噴出している今をどう捉えるべきか議論してもらいました。学術的にとても面白いテーマなのですが、討論の時間が極めて限られてしまったのに企画側として反省しきりです。それぞれのプレゼンは抜群に面白かったです。参加者は延べで200名くらい。
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今週月曜:『トランプ政権でどうなる!?アメリカ政治外交の仕切り直しと世界の動揺
 もうタイトルのつけようがないので、こうなりました。首都大の梅川君、本学に着任した上先生から大統領権限で何が出来るのか、移民問題をどう捉えるべきか、外交はどうなるということを議論しました。スタンフォードで定番の、ランチタイムからはじまるスタイルを導入。質問がひっきりなしだったので、話の方向性は悲観的ですがよしとしたいです。(我々から滲み出る反トランプ臭は消しようがなかったようではあります。)参加者は約100名。

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今週火曜:『東アジア秩序と中日関係
 月曜の午後からは上海・同済大学の鐘振明先生を招へいしました。上のシンポジウムをやっている間に鐘先生が羽田到着というスケジュール。月曜は馬車道の夜に。火曜はお昼は神楽坂・市ヶ谷で今をときめく2人の研究者にあってもらい、夕方は神大に戻り、講演会。鐘先生はBrookings、SAIS両方でそれぞれ1年過ごしたばかりの、アメリカ専門家。私たちの研究グループ(東アジアの安全保障秩序)は学内・外の若手から構成されていますが、とても大きな刺激をもらいました。初めての訪日なので、夏に上海でお世話になったことのお返しに少しでもなればと思いました。

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シンポの講演会も、想定以上に聴衆が多くて、とてもよかったです。どうだ、神大も頑張っているだろう、箱根駅伝の勢いに乗って今年はがんがんと行くぞ、と。しかし、いかんせん、疲れました。

今日は神大が受け入れているタスマニア大の学生たちへの特別講義、明日は尊敬する先生との対談、トランプに関する講演、日ロ関係の勉強会司会、金曜もうちあわせ4件とか、普段暇(!)なのにいったいなんだかわかりませんが、頑張ります。

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2016年の研究を振り返って [雑感]

2016年は、15年末に単著を無事に出したこともあり、中長期的視野に立って「次の仕込み」をする時期になりました。

8月末に体調を崩したこともあり、海外出張を絞り込み、10回/55日と例年の半分、この10年でもっとも日本にいました。その代わりに日本で集中して研究、教育が出来ました。日本で行われる会議や意見交換をもっと丁寧に参加するようにもなり、研究面での支障もあまり感じなかったので、これでいいような気がしてきました。

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【研究プロジェクト】
主査を務めるプロジェクトを国内、国際それぞれ1つ立ち上げつつあり、今後3-4年で成果をだしていく予定です。来年度にキューバ(3月に学術交流で訪問)との大規模な交流をするための補助金も獲得しました。さらにスタンフォード大学の日米同盟プロジェクトを5月に立ち上げ、カール・アイケンベリー教授と今後も続けていく予定です。

【論文】
「対外政策:アジア外交の安全保障化」が来年早々に出版されます。これは日本外交・安全保障政策について10年前に冷戦終結から小泉政権まで書いたものの続編として、第1次安倍政権から民主党、そして2・3次安倍政権と一貫して日本の安全保障政策がアジア外交との接点を求めてきた過程と、その背景にある対中政策について論じています。(本も御厨編『変貌する日本政治』の後継企画として、サントリー文化財団の助成をいただいた竹中班の企画です。)

またグリフィス大学(豪州)の企画でUS Primacy in the Asia-Pacificという編書への寄稿論文をドラフト。来年に入稿、Edward Elger(英国)より出版の流れです。短いものは本年春にオーストラリア国立大で発表、出版して、本人の予想を超えて好評でした。最近もオーストラリアン紙(現地最有力紙)に何カ所か引用されていました。

日本国際政治学会で発表した「アメリカは中国の権力をどのように捉えているのか」という論文は、下敷きは日本国際問題研究所「米中関係班」の研究です。(同研究所のコラム「アメリカにおける戦略議論と中国」参照。)この論文ではオバマ政権で中国政策が変容していること、対中認識は最後のところで踏みとどまっていることを示しているのですが、フレームワークが欲しいと思っていたところにトランプの登場で、そもそもこれを今まとめる必要があるのか、この2ヶ月悩みが深まっています。。

【講義】
本務校でのゼミでは3年生にアクティブ・ラーニングを徹底、かなり成功したと思います。反省点も勿論あり、来年の3年生ではさらに工夫をしてみたいと思います。講義の内容を本格的に見直したいのですが、それは来年度の課題にしたいと思います。

一橋大学で学部向け「国際安全保障」を新たに担当、100名強の学生のノリがよかったのが印象的でした。上智大学では英語学科で「アメリカとアジア太平洋」を英語講義する2年目。各学期1つずつの非常勤からも様々な刺激をもらっています。総じて、学部講義ではこれまで基礎を重視してきたところ、中級レベルにももっと取り組もうと感じるようになりました。

【社会貢献】
今年は官公庁、研究機関、民間企業、市民講座、異なる地方の大学、湘南の高校と、様々なところでお話しさせて頂く機会を頂きました。「激動期の国際政治」はいつも使われる便利なフレーズですが、今年ほどこの言葉が相応しい年もなかったと思います。世界を分析する道具を少しでも伝えることができていれば、と願っています。

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来年は、米中関係について1972-78年に形成された和解が「破綻」していく過程を勉強したいと思いますし、東アジア秩序論についても骨太な議論ができるように勉強を続けたいと思っています。まずは1月、誰にも頼まれていない書評原稿のためにVictor Cha(2016)を読み込む予定です。

教育も新しいことを色々と試していきたいと思います。まずは申請が通った電子黒板の使い方に慣れないと[ダッシュ(走り出すさま)]

研究、教育に誠心誠意取り組み続ける1年にしたいと思います。

日本台湾交流協会への名称変更 [雑感]

年末に大変嬉しいニュース。

「日本の対台湾窓口機関、名称に「台湾」を追加 外交部が歓迎の意表明」

トランプ氏によって1970年代に出来上がった中国、台湾との外交関係のあり方に一石が投じられていますが、それとは全く関係なく、

過去5年以上にわたる、日台関係の発展はめざましいものがあり、それは社会経済関係の深耕だけでなく、市民レベルでの意識変化も伴っていると思っています。

持論として論文にも記載しましたが、台湾を台湾として、両岸関係や中国との文脈から切り離して理解する日本人が明らかに増えました。政官だけでなく、一般的にも。

中国への牽制とか、そういう浅はかなことではなく、素直に台湾を台湾とみる、そんな感覚が共有されてきていることを率直に喜んでいます。そして、関係者の努力に敬意を表します。

今年は、学生会議で教えた台湾の学生が外交官試験に受かったことも大きな喜びでした。(学生会議で関わった(元)学生との交流は様々に続いていて、今月には内閣府PKO本部から国連に羽ばたかれる方に大学に講演に来てもらいました。

日台関係にとって2017年がさらによい1年になることを願っています。

トランプ外交と同盟国の憂鬱 [雑感]

12月はトランプに直接、間接にまつわる講演にかなりの時間を取られてしまいました。

ツイッターやFoxニュースをみなければいけない日々が4年間も続くのかと思うと気が滅入りますが、それは同盟国政府も同じこと。

ということで、表題のコラムをシンガポールの聯合早報より出版して頂きました。中国語です。
http://www.zaobao.com.sg/forum/views/opinion/story20161227-706544

日本語原文は以下の通りです。

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トランプ外交と同盟国の憂鬱

 ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領当選は誰にも驚きだった。だが結果から見れば、EU離脱を国民投票で決めた英国、さらに韓国、欧州各国など先進的な経済発展がされていたはずの国で、既存政治の分配枠組みへの不信感が募り、それが政治不信へと至ったのが2016年であった。
 トランプ氏は外交政策で選ばれたとは決して言えない。しかし当選を決めた後、オバマ政権の遺産だったキューバとの関係改善、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をいともあっさりと否定したかと思えば、蔡英文氏が祝意を伝える電話をこれもあっさりと取った。「すべて前政権以外(Anything but)の政策をとる」という傾向は政権交代につきものだが、トランプ氏は「すべてこれまでの政権と異なる(Anything but all past administrations)」ことを目指しているかのようである。
 国防長官人事などに垣間見られるように、イスラム国への強い対抗策はでてくるだろう。イランも白紙からすべてをやり直すのかも知れない。
 TPPはオバマ政権のアジア再重点化(rebalancing)政策の要だったが、トランプ氏が政治、軍事面におけるアジア政策にも革新をもたらすことが危惧されている。たとえば日本や韓国には米軍駐留経費のさらなる負担だけでなく、防衛予算増額やアジアを越えた地域への積極的関与も求められるのかも知れない。TPPが死文化しただけでなく、アジア再重点化(rebalancing)も終わった政策となるのだろうか。
 あるワシントンからの友人が先週私に語ったことは正論だと思う。「トランプ外交がどのようなものになるのか、それは本人を含め誰にも分からない。しかし、アメリカが関与を弱めるかも知れないという認識を地域に広げたことで、アジア諸国はその可能性を織り込んで動くことになる。その意味で、我々はすでにトランプ効果のなかで考えていかなければならないのだ。」
 アメリカの同盟国に安心できる材料はあるのだろうか。国際感覚豊かな国務長官の任命は、自由貿易のメリットも十分に理解するだろうことを考えると悪い話ではない。国務副長官、国防副長官にも良い人選が進んでいるという噂もある。北朝鮮への戦略的忍耐が放棄されるのは結構なことだと思う。任期四年間のうちに進展する核ミサイル開発に過剰に反応しないで、適切な圧力行使が行われることが前提だが。
 トランプ外交の先が見通せないこと、不確実性は最大の不安とは言えない。どのような政権も多少の差はあれ、政策の方向性は変わるし、それはオバマ外交も例外ではなかった。同盟国は、すべてが「アメリカ第一」の原則の下で二カ国での再交渉になること、さらには他国との取引材料になることを最も恐れている。
 同盟国の希望は、中国の封じ込めでは全くない。中国の政治、軍事的な振る舞いに危険なところはあっても、ともに豊かになる未来を誰しもが望んでいる。同盟国が望んでいるのは、アメリカが政策を立案するに際して、同盟国というプリズムを通して「も」地域を認識し、行動することだ。新しい大統領は、これまでのビジネス経験から、どうも世界を一対一の関係から捉える傾向があるが、すべてはつながっているのだ。アメリカと同盟国は原則あるグローバル化の促進を最大の目標として共有してきた。同盟国は自らとの交渉と、ロシアや中国との交渉をアメリカが別々のトラックでして欲しくないと願っている。
 新しい国際関係のパターンの出現は、すでに日本にとって計算違いを引き起こし始めている。プーチン大統領はあきらかに孤立を招いた西側包囲網がこれで崩れると確信しただろう。中国との関係は、今は状況を不安定にさせる事態が相次いでいる。政権発足後、当初は緊張するだろう。だが、もし米中が一転して深い対話に進むことは十分にあり、アジア中の友人は自らが次の取引材料になってしまうことを恐れている。アメリカの関与を信じられなくなったアメリカの友人は、ユーラシア大陸の東西どちらでも様々な対応策、さらに奇策を打つだろう。
 だからこそ、アメリカ以外の国の連帯こそこれからの4年間の鍵になると筆者は考えている。アメリカ、西欧、日本のG7諸国(先進国首脳会議参加国)はこれまで、国際秩序において価値観の共有を訴え、東南アジア、オーストラリア、インドの友人ともその目標を共有してきた。しかし当面、国内事情優先、二カ国外交を好むアメリカと価値観の共有という崇高な目標を第一に訴えることは難しそうである。まず、世界に係わり続ける国際主義の必要性、多数の国と協力し合う多国間主義の素晴らしさをアメリカ以外の国が連帯してトランプ氏に丹念に説いていくしかないだろう。その意味で、我々は後退した世界のなかに生きることを強要されているのだが、やがて再び「グローバル第一」のスローガンをアメリカとともに掲げることを夢見たいものである。

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オーストラリアン紙(豪州最有力紙)に2週前にかなり引用されていたことを今更気づきました。

http://www.theaustralian.com.au/news/world/trump-and-china-force-japan-to-embrace-new-partners/news-story/8037ced9f7771e5a5b532ec2e46f8553

欧州知識人とトランプ外交を語り合う [雑感]

先週の日欧有識者対話でアメリカ新政権のアジア太平洋政策について、現時点での分析を提供する機会を頂きました。

乏しい資料、トランプ氏自身の「不確実に振る舞うことが敵への抑止になる」という考えもわかったうえで、学術的な推論を提供するのも研究者の役割と理解して、お話ししました。報告は英語ですが、以下はその骨子です。

その後、人事をめぐり迷走が続いていますが、私がお話しした「三つの問い」は当面、有効だと思います。(会議時点より若干修正しています。)

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トランプ外交を予測することほど難しいものはない。トランプ氏自身による主要演説はニクソン・センター(現Center for National Interests)で行われた16年5月のものにすぎない。先週フォーリン・ポリシー誌にグレイ・ナバッロ共著論文がでたが、彼らや、マイケル・ピルズベリー氏の影響力も正直誰も分からないのではないか。

ここでは三つの問いかけをしながら、トランプ外交の性格を考えてみたい。

1.「アメリカ・ファースト」はグローバリズムを完全に否定する?

答えはYesアンドNoだろう。
一方で、アメリカ・ファーストは貿易では保護主義につながる懸念がつよい。それはトランプ氏の政策では国内経済、雇用問題が重要視されていることと直結している。それが「ラスト(さび付いた)ベルト」の票をつかむことにもなった。結果として、外交は重商主義的な商人外交の装いをもつだろう。自由貿易は危機に瀕する。

他方で、トランプ氏のニクソン・センター演説はアメリカが人道主義を維持すると述べており、リベラルな価値を全否定はしていない。問題としているのはオバマ政権期における介入主義であり、派遣の原則を打ち立てるべきと主張している。ワインバーガー/パウエル=ドクトリンではないが、介入主義の見直しを形にしていくことは十分にあるだろう。また、民主化、人権のための介入を前面に押し出すような外交も難しくなる。

2.同盟を見限り、前方展開を見直し、孤立主義に完全に動く? 

答えはNoだろう。同盟そのものを否定したことはない。どこまで参考になるかは未知数だが、グレイ・ナバッロ論文はアジアの同盟をアメリカの戦略的基礎とみている。中国の台頭に伴う環境変化のなかで、むしろアメリカに戦略的機会があり、リベラルな既存の秩序を守るとまで言っている。ただ、ピボットという用語はTPPとともに死んだ。

孤立主義にならずとも、多国間主義(マルチラテラリズム)は道具的な意味(いわゆるA la carte多国間主義)としても意味を失いはじめるのかもしれない。単独行動主義(ユニラテラリズム)が目立つだけでなく、あらゆる分野で2国間(バイ)での交渉を好むように動くのではないか。オバマ政権がアジアのマルチに全面的に参加した、この20年でも珍しい外交を展開してきたことと対照的な結果になるだろう。

3.トランプ外交はレーガン外交を目指す? 

これまで力重視(position of strength)の外交は示唆されており、軍の規模拡大を約束している。たとえば戦闘機は3割増強など。技術革新にも言及しており、サードオフセットに通じる言及もみられる。その意味で、グレイ・ナバッロ論文が言うように、レーガン政権の安全保障政策に近い形を目指すのかも知れない。

しかし二つのポイントがある。第1に、軍事予算の増額が思い通りに進まなかったときに、果たしてどうなるのか。軍事予算に限らないが、トランプ氏の政策綱領は予算がかかるものが多く、それは議会共和党で強まっている予算縮減の政治と衝突することになる。

第2に、トランプ外交はニクソン的な「リアリズム」を発揮し、ライバルとの交渉を好むのだろう。ロシア、中国が典型的な交渉相手として示唆されるところである。

オバマ氏も外交を好んだが、イランとの交渉をトランプ外交は否定するだろう。同じ外交交渉でも何が異なるのか。

オバマ大統領は、あくまでも紛争の平和的解決、核のない世界などリベラルな秩序の実現という目標にかなう限りにおいて交渉をおこなっていた。米中首脳会談など中国との対話強化もみられたが、それも国際ルールに中国を誘い込むための交渉だった。

他方で、トランプ氏の交渉はどうも様子が違う。特定の価値観や秩序を念頭に置かず、アメリカのその場その場での国益を得るためには交渉で取引をすればよい、という考えに見える。

これは非常に危険な結果をもたらしかねない。戦後国際秩序の根幹を揺さぶり、大国間での取引が中心で、ルールによる安定が損なわれた世界が登場することにつながりかねないからだ。

アメリカの覇権的な秩序に否定的な論者はリアリストを自任し、大国協調こそ中国やインドの台頭にともなった新しい世界の力構造で重要な秩序観だと主張してきた。しかし彼らは漸進的変化を考えていたのであり、アメリカが政策を急展開させ、秩序を突然揺さぶることのリスクをどこまで理解していたのだろうか。

トランプ大統領のトップ・アジェンダは何か?

さて、過去からの教訓を一つ紹介したい。カーター政権における在韓米軍撤退を覚えているだろうか。大統領の個人的イニシアティブではじまった、韓国からの撤退は官僚機構の強力な骨抜き工作により頓挫した。しかし、あまり知られていないが、同時期、米中正常化交渉にカーターは積極的に介入している。結果として米中交渉は成功したとは言えない内容となった。(拙著『共存への模索』を参照)重要な含意は、特定のアジェンダを実現させないように官僚機構が動いたとき、別のアジェンダで大統領の考えが強く反映されることもあり得る、ということだ。大統領の介入を全てにおいてはねつけられるほど、官僚機構は強靱ではない。

大統領と官僚機構とのバーゲニングがどのように行われてくるのか、我々は注視しなければならない。TPPはいの一番に否定された。その次は何が来るのだろうか。

最後に、日本についてだが、日本への要求は基地負担増にとどまらないだろう。自衛隊の役割任務の見直しが求められたり、防衛予算増額も視野に入ってくるだろう。日本としては、なによりもまず、核武装も日本が海外派兵することも困難であることを訴えつつ、現状の枠内で漸進的に、対中戦略での役割を訴えていくほかない。


箱根でのゼミ合宿など [雑感]

紅葉[もみじ]の箱根でゼミ合宿。

雨の強羅で、これまで一ヶ月格闘してきた『決定の本質 第2版』をさらに8時間。そして快晴、小春日和の日曜は、ケーブルカー、ロープウェイ、そして海賊船に。つぎの課題『失敗の本質』に向けて英気を養ってもらいました。2年ゼミも別の日に初コンパ。『神大一勉強していると言われるゼミになろう』と気勢を上げていました。厳しい指導でもついてくる良い学生に囲まれて楽しくやっています。

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今週は国際会議3つ、学務の会議も山のよう。そして金曜午後はスタンフォードのカール・アイケンベリー教授(陸軍中将、アフガン大使)のお供で目黒基地と市ヶ谷で様々な面会。合計☆16個(たとえば海将・空将で星3つ)という、なかなかない1日でした。最後はニュー山王の骨付きリブアイ・ステーキで締めました。

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そういえば火曜のレセプションでお見かけした、ケネディ大使の革ジャン姿がかっこよかったのでシェアします。

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安倍トランプ会談は、『リアリズム』としては大金星。ただアメリカの人々が真にトランプを恐れているのはこの何十年ものアメリカの進歩主義の成果を彼をシンボルとした政治が否定していること。親日派の多く、良識ある人々の気持ちを今回の面会が傷つけていないことを祈ります。
(アメリカでは白人至上主義が言うまでもなく盛り上がってしまっています。)

トランプ外交へのコメントでは、畏敬する先輩、森さんの日経・経済教室が秀逸です。さすがとしか言いようがありません。政権内対立の予測含め、学術的推論も秀逸。マルチとバイの使い分け、ロシア巡る軍との対立など。台湾武器売却のポイントも個人的には注目してます。

おまけ:箱根・大涌谷では今も多くのガスがでていますが、ロープウェイから綺麗にみることができます。人体にはほぼ無害(のはず)です。
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